プロローグ~不正発覚の連鎖

不正発覚の連鎖
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不正発覚の連鎖
神戸製鋼所の品質データ偽装および日産自動車とSUBARUによる検査不正の問題が発覚した経緯をまとめた
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総論

 ほぼ同時期に発覚した、神戸製鋼所の品質データ偽装および日産自動車とSUBARUによる検査不正の問題。日本を代表するものづくり企業での相次ぐ不祥事が大きな注目を集めた。いずれも品質に関連した不適切な事案だが、「品質が悪い製品を偽って世に出した」とだけ理解すると本質を見失う。まずはそれぞれの不祥事を整理してみよう(図1)。

図1 神戸製鋼所のデータ偽装問題と日産/SUBARUの検査不正問題の比較
図1 神戸製鋼所のデータ偽装問題と日産/SUBARUの検査不正問題の比較
神戸製鋼のデータ偽装は基本的に、民間企業間での契約不履行の問題となる。ただし、一部日本工業規格(JIS)を満たさない製品に「JISマーク」を付けて出荷しており、こちらはJIS法違反(法令違反)となる。一方、日産自動車とSUBARUの検査不正は、型式指定制度を破るもので法令違反だ。
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順守できなかったのは民間の契約か法令か

 まず神戸製鋼の事案は、同社子会社における工業標準化法(JIS法)の違反を除けば、基本的には民間企業同士の契約の問題だ(データ偽装編参照*1。取引先との間で取り交わした仕様書の基準を満たさない製品を、満たしているものとして出荷したのである。この際に検査証明書、いわゆる「ミルシート」に記載される数値を書き換えたり、捏造したりした。

*1 コベルコマテリアル銅管の秦野工場は、JIS法違反を受けて一部製品のJIS認証を取り消されており、法令違反に当たる。同工場は、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001」(JIS Q 9001)の認証も取り消されている。なお、ISO9001に関しては神戸製鋼グループの3つの拠点、日産自動車の2工場と日産自動車九州、日産車体の生産部門が認証の一時停止、または認証範囲の一部取り消し(縮小)となった。

 その結果、神戸製鋼の材料を使っている製品のメーカーは安全性をはじめとした品質確認に追われる*2。現時点では、データ偽装された材料を使った製品で不具合が確認されたり、交換を要請されたりといった事実はないとされる。ただし今後、リコールなどの対策費用を神戸製鋼が請求される可能性はある。

*2 消費者の不安を解消する必要がある最終製品だけでなく、生産国として品質を担保する責任がある「MRJ」のような製品にも影響は広がった。