研削盤や微細加工機で業界随一の精度を誇るナガセインテグレックス。高精度加工を追求し、他社と桁違いの性能を実現している。

高精度加工の駆け込み寺

 その性能を支える中核技術が、同社が世界で初めて、研削盤の全軸に採用した「油静圧案内」だ。油静圧案内とは、機械の運動をガイドする方式の1種で、ガイドレールと移動体とのわずかな隙間を油圧で保持するもの。ガイドレールと移動体が非接触のため摩擦抵抗が極めて小さい。質量30tのテーブルも手で軽く動かすことができ、高精度の位置決めを実現できる。「直線は真っ直ぐ、円は真円で動き、くり返し再現性が高い」(同社常務取締役製造本部技術部部長の新藤良太氏)。

 加えて、摩耗がないので経時変化による精度の劣化がなく、寿命も長いという特徴がある。新藤氏は、「油静圧案内に挑戦して愚直にやり続けてきた。精密研削盤という点ではパイオニアを自負している」と自信をみせる。

 例えば、同社の超超精密微細加工機「NIC」シリーズは、最高で0.1nmの制御分解能を持つ(図1)。同 300αは、6軸の全てに油静圧案内を採用した上で、平衡移動軸はリニアモーターで、回転軸はダイレクトドライブ(DD)モーターで駆動するフラッグシップマシンだ。平面上に半径1mmの円弧を描くように制御した場合、ズレをほぼ10nm以内に収められる。ここまでの精密加工機になると、モーターはリニアモーターもDDモーターも全て特注品だ。

図1 精密微細加工機「NIC」シリーズ
図1 精密微細加工機「NIC」シリーズ
同社のフラッグシップマシン。「NIC 300α」は最小設定単位0.1nmで、同時6軸制御が可能(a)。(b)は水平面(XY軸)に半径1mmの円弧を描いた場合の計測結果。ズレを10nm程度に抑えられる。(c)1辺1μmの四角錐を加工した微細加工の一例。 (出所:ナガセインテグレックス)
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 同社の顧客は金型メーカーや工作機械メーカー、歯車メーカーが多く、基本的に受注生産である。特に「高精度の加工が必要なときの駆け込み寺のようになっており、機密保持を結んで製造する専用機も多い。世界に1台しかないような機械をかなり造っている」(新藤氏)。

 その特殊性こそが、従業員100人余りの同社が業界で高い評価を得て生き残っている強さの理由だ。その分、納入リードタイムは、早いものでも4カ月、大型で難しいものになると1.5年と長い*1。しかし、1年以上先の受注残が多い上に他社に代替製品がないことから、同社は景気変動の影響も受けにくい。2008年のリーマンショック時も他の工作機械メーカーに比べて影響は小さかったという。

*1 ただし、近年はプロジェクトチームを作って納期リードタイム短縮の取り組みを始めている。