太陽光やマイクロ波といった電磁波を使って材料を量産する。そんな時代がすぐそこまで来ている。従来の製造技術では超えられなかった技術面やコスト面でのハードルを、太陽光を利用する人工光合成技術やマイクロ波技術で超越していく。これまで作れなかった電子材料を低い消費電力で安価に製造できるようになる。

 「二酸化炭素(CO2)を削減しながら材料を量産」「これまで実現できなかったナノ金属材料を製造」─。従来の常識を覆す新しい材料製造法の研究開発が活気づいている。中でも進展が著しいのが、太陽光やマイクロ波といった電磁波を活用した製造技術だ。従来の製造方法で課題とされる、消費電力が大きい、大量のCO2を発生する、広大な敷地が必要、製造できる材料に限りがあるといった問題を克服する手段として期待を集める。

 太陽光を利用するのは、「人工光合成」技術である(図1)。その名の通り、太陽光を利用し、水(H2O)とCO2から糖と酸素を生み出す植物の光合成を模倣した一連の技術を指す。人工光合成では一般に、太陽光を使ってH2OとCO2からエネルギー源や材料になる有機物を生み出す。温室効果があるCO2を削減しながらエネルギー源や材料を製造できるとあって、研究開発が盛んだ。

図1 「波」を利用した製造法に活路
図1 「波」を利用した製造法に活路
従来の材料の製造法への閉塞感から、太陽光やマイクロ波といった「波」を利用した新しい製造方法に期待が集まっている。中でも、太陽光を利用する人工光合成技術やマイクロ製造波術の研究開発が盛んだ。その結果、以前の課題解決に見通しが立ってきた。2020年代には、人工光合成技術やマイクロ波製造技術を活用した材料製造が急速に普及しそうだ。
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 2012年ごろまでは、工業化のシナリオが不透明、生成できる物質に限りがある、効率が低いといった課題があった。ここにきて、工業化に向けた取り組みが加速している(図2)。例えば、人工光合成プロセスで利用する光触媒シートや分離膜を組み合わせることで、安価な水素発生装置を実用化する動きが出ている。民家への適用をにらんだ実証試験用の家屋建設も始まった。

図2 実用化に向けた成果が続々
図2 実用化に向けた成果が続々
人工光合成技術やマイクロ波技術の分野で、実用化に向けた動きや成果が続々と出ている。例えば、人工光合成技術では、大型の光触媒シートの開発や、実証試験用の戸建の建設が始まった。付加価値が高い無機材料の作製も可能になった。マイクロ波を使い、これまで作るのが難しかった細くて長いAgナノワイヤーや、粒径が数十nmの金属ナノ粒子を製造できるようになった。これまで混ざらなかった金属での合金も作製可能である。(写真:上段左は三菱ケミカル、上段中央は飯田グループホールディングスと大阪市立大学、下段左と下段中央はマイクロ波化学、下段右は京都大学)
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