Bosch社は自動運転時代を見据えた開発に、全方位で取り組む(図1)。付加価値が大きく高まる可能性があるシェアサービスに加えて、中核と言える人工知能(AI)をはじめとしたソフトウエアやセンサー、さらに自動運転車の統合制御に欠かせないシャシー部品まで自社で手掛ける。

図1 自動運転の開発に全方位で挑む
図1 自動運転の開発に全方位で挑む
Bosch社が自社で手掛ける領域を示した。青色が自ら手掛けるところで、点線が他社と協業する領域。
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 自動運転技術の将来は読みにくい。いつ頃にどの水準の技術がどの地域に普及するのか多くの予想が入り乱れる。Bosch社の幹部は、「自動運転技術がどんな形で普及しようとも自社でいち早く対応できる体制にする」と、全方位の“自前主義”で臨む狙いを明かす。売上高が730億ユーロ(約9兆5000億円)に達する世界最大の部品メーカーであるBosch社だから取り得る“集中と選択をしない”戦略と言えよう。

 ただ全方位を志向しながらも、勝つ見込みが薄いと考える分野では協調路線で臨むしたたかさを併せ持つ。自動運転技術の中核の一つになり得るAI半導体では米NVIDIA社と提携し、自社で手掛けない。他を圧倒する存在感を示しつつあるNVIDIA社に挑んでも負ける可能性が高いと冷静に見る。