Bosch社、Continental社、ZF社、デンソー―。メガサプライヤーの立ち位置が揺らいできた。きっかけは、早ければ2020年ごろに実用化が始まる完全自動運転車だ。サービスや半導体、人工知能(AI)を開発する企業が自動車業界の序列を揺さぶる。「数」の追求に腐心してきたメガサプライヤーは、方針の転換を迫られかねない。
「今、我々の前には、米Google社や同Apple社、同Amazon.com社といった新しいプレーヤーが登場している。未来は決して自動車会社だけで作れるものではない。前例のない、海図なき戦いが始まっている」。
発言の主は、トヨタ自動車社長の豊田章男氏である(図1)。2017年8月4日に開いたマツダとの提携に関する会見で危機感を口にした。電動化にコネクテッド、そして自動運転―。次世代車両のキーワードがはっきりしてくる中で、「自動車産業はパラダイムシフトが求められている」(豊田氏)。
豊田氏が名指ししたライバルのGoogle社は、自動運転技術の開発プロジェクトを切り離して米Waymo社を立ち上げた。既に、一般人に自動運転車を無料で貸し出す試験プログラム「Early Rider Program」を始めている。自動運転の“頭脳”を担う人工知能(AI)技術を持つ企業の台頭も目立つ。筆頭は米NVIDIA社で、世界中の自動車メーカーやメガサプライヤーが群がる。
100年以上の長い時間をかけてコツコツと積み上げた自動車業界のピラミッド構造が、音を立てて崩れ始めた。