製品の性能を限界まで高め、複数の機能を同時に実現するために、さまざまな種類の材料を適材適所で使いこなす─。この「マルチマテリアル化」が、当たり前となる時代に入りつつある。だが、残念ながら、世界レベルで見て日本企業は対応に後れている。マルチマテリアル化を支える新技術を積極的に取り込み、世界に負けないものづくりに向けて舵を切るべきだ。そして、それは今である。マルチマテリアル化を支える新しい材料や接合、加工技術を紹介する。
今こそ本気でマルチマテリアル
目次
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欧米に対する後れが深刻も、支える新技術が続々登場
危機とチャンス
「欧米の自動車メーカーに5年は後れを取っている。あらゆる面で負けていると言わざるを得ない」。トヨタ自動車でかつて炭素繊維強化樹脂(CFRP)製ボディーの開発に携わり、現在は金沢工業大学大学院工学研究科教授を務める影山裕史氏はこう語る。自動車ボディーの「マルチマテリアル」化に対する、日本の自動車メーカ…日経ものづくり
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Al合金と高張力鋼板を直接接合、スーパーハイテン材に対応可能
神戸製鋼所
アルミニウム(Al)合金を使ってできる限り軽くし、薄くても強い高張力鋼板(ハイテン材)を採用して軽量化しつつ強度を稼いで、かつコストも抑える─。これは自動車のボディーでの軽量化設計の王道とも言える考え方だ。既にドイツの自動車メーカーがマルチマテリアル設計を施したボディーにおいて積極的に採用している。日経ものづくり
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樹脂にAl合金を塑性流動で結合、形状の工夫で2~3割の軽量化効果
京浜精密工業
図1は、軽量化を図った変速機のハウジング(以下、ハウジング)。京浜精密工業(本社横浜市)が開発した。現行のアルミニウム(Al)合金製ハウジングの一部を樹脂に置き換え、Al合金と直接接合してハウジングに仕上げている。日経ものづくり
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CNF添加で従来手法の限界突破へ、低熱膨張で高強度な電子部品材料
太陽ホールディングス
従来手法で低熱膨張性を追求することが難しくなってきた─。化学材料メーカーの太陽ホールディングス(以下、太陽HD)は、エポキシ樹脂に植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)を添加し、熱膨張しにくい電子部品用絶縁材料を開発している。日経ものづくり
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微小な単位で材料を変更できる、3Dプリンティング
3Dプリンティング(Additive Manufacturing:AM)は、これまでの成形・加工技術で造った部品や、それらを組み合わせて接合するマルチマテリアル化とは異なる、全く新しい部品を実現できる可能性を秘めている。3Dプリンティングにはさまざまな手法が存在するが、共通するのが材料を少しずつ供給…日経ものづくり
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9割が「マルチマテリアル化が重要」、今後発展する関連技術は「接着剤」
調査テーマ「マルチマテリアル化の現状と課題」
さまざまな種類の材料を組み合わせて、製品の性能を高めるマルチマテリアル化の重要性が高まっている。9割を超える回答者が、開発・設計において「マルチマテリアル化が重要になる」と予想。製品の軽量化や強度・耐熱性の向上など、複数の機能を同時に実現していかなくてはならないことが背景にあるようだ。今後、マルチマ…日経ものづくり
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タイミングチェーンカバーを樹脂化、180℃に耐えて3割超の質量減狙う
ダイキョーニシカワ
図1は、ダイキョーニシカワが開発中の樹脂製タイミングチェーンカバーだ。その名の通り、自動車のエンジンのカムシャフトを駆動するタイミングチェーンを覆うカバーである。現行はアルミダイカストで出来ている。これを樹脂に置き換えることで、30%以上の軽量化の実現を狙う。日経ものづくり
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エンジンの本体部品を3割軽く、240℃の耐熱性を持つPIで挑む
三井化学
一層の質量削減を狙い、自動車の樹脂化が未踏の領域に向けて急速に進んでいる。「樹脂エンジン」と表現される通り、エンジンの部品を樹脂で置き換える動きが活発化しているのだ。そのため、耐熱性に優れる樹脂のニーズが高まっている。日経ものづくり
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「固定概念を壊す」フロントウインドー、樹脂化とピラーレスで6.6kg軽量化
帝人
「『自動車のフロントウインドーはガラス』。そんな固定概念を壊したかった」(帝人複合成形材料事業本部グレージング事業推進部部長の帆高寿昌氏)─。日経ものづくり
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CFRTPとAl合金を熱で接合、部材の再利用でコスト削減も
太陽工業
精密加工メーカーである太陽工業(本社長野県諏訪市)は信州大学と共同で、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)をアルミニウム(Al)合金に接合する技術を開発している。ポリアミド(PA)6を用いたCFRTPの表面を熱で溶融させるとともに、体積を膨張させてAl合金と直接くっつけるという技術だ。日経ものづくり
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立体成形できるCNF透明シート、低熱膨張性を生かせる用途開拓へ
王子ホールディングス
王子ホールディングス(以下、王子HD)は成形性に優れた植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)透明シート「アウロ・ヴェール 3D」を開発した。同製品をプレス加工すれば、自由に立体成形できる。現在、ユーザー企業と共に用途開発を進めている。日経ものづくり