従来手法で低熱膨張性を追求することが難しくなってきた─。化学材料メーカーの太陽ホールディングス(以下、太陽HD)は、エポキシ樹脂に植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)を添加し、熱膨張しにくい電子部品用絶縁材料を開発している。
2017年5月にCNFを添加した「世界初」(同社)となる層間絶縁材料*を発表しており、2018年から量産を開始する予定だ(図1)。低熱膨張にするために従来と違ってシリカだけではなくCNFも添加することで、製品の熱膨張を抑制でき、強度も高くなるという。
* 層間絶縁材料 異なる層にある配線の接触を防ぎ、回路間の絶縁性を維持するもの。
プリント配線基板には樹脂部分(絶縁材料)と金属部分(配線)があり、両者の熱膨張率は大きく異なる。そのため電子部品の実装工程や利用時の温度変化によって生じる熱応力で変形してひび(クラック)が入ったり、配線が断線したりする可能性がある(図2)。同社は絶縁材料の熱膨張率を低くして金属部分との熱膨張率の差を小さくすることで、こうした欠陥が生じることを抑える。
電子部品は小型化や微細化が進んでおり、熱膨張による小さな変形が機能などに悪影響を及ぼしてしまう。「年を経るごとに、部材の熱膨張率の低減要求が大きくなっている」(同社研究本部研究部研究二課長の宇敷滋氏)。