「『自動車のフロントウインドーはガラス』。そんな固定概念を壊したかった」(帝人複合成形材料事業本部グレージング事業推進部部長の帆高寿昌氏)─。

 帝人は「世界初」(同社)となるポリカーボネート(PC)製のピラーレスフロントウインドーを開発した。既に京都大学発の電気自動車(EV)メーカーであるGLM(本社京都市)が採用を決めており、2017年秋から同ウインドーをスポーツEV「トミーカイラZZ」のオプションとして追加する予定だ*1〔図1(a)〕。GLMは現在、公道で走行するための国内認証の取得を目指している。

*1 2017年7月より適用された新保安基準に対応している。この基準によって、樹脂をフロントウインドーで使えるようになった。ただし、ガラスと同等の高い耐摩耗性などが求められる。

図1 PC製フロントウインドーを用いた「トミーカイラZZ」
図1 PC製フロントウインドーを用いた「トミーカイラZZ」
GLMが製造・販売するスポーツEV「トミーカイラZZ」(a)。PC製フロントウインドーにより、軽量化を図っている。フロントウインドーの外縁部を厚くし、強度を上げた(b)。Aピラーが不要になるため、視界が広い。
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 PC製フロントウインドーの最大の利点はやはり軽さだ。ガラスから樹脂になること、フロント部のフレーム枠(Aピラー)が不要にできることなどからガラス製品と比較して質量を36%ほど削減でき、約6.6kg軽くなるという。

 さらにAピラーをなくせるため、自動車を運転する際の視界も広がる。帆高氏は「乗車時はバイクに乗っているような解放感を味わえる」と、軽量化だけではない同ウインドーの付加価値を強調する。