「2年後に実用化」と言われ続けたEUV。今度こそ実用化と見られている根拠は、EUV光源開発におけるブレークスルーだ。実用化への大きな壁だった光源の出力が大幅に高まった。まだ課題は残り、当面は既存技術との混在が避けられない。それでも導入のメリットが大きく、利用者側の期待も高い。

 「今度こそEUVリソグラフィーは実用化される」─。元東芝 研究開発統括部 研究開発戦略室長で現在は高感度レジスト材料などを開発する、先端ナノプロセス基盤開発センター(EIDEC) 代表取締役社長の石内秀美氏は、EUVの実用化見通しをこう語る。

 EUVには、露光装置を開発するオランダASML社が2007年ごろから「2年後には実用化できる」と言い続けてきた過去がある。それでもEIDECの石内氏は、今回はこれまでとは違うとみる。

「DAC登壇後は後に引けない」

 その根拠は、大きく3つある。(1)2017年6月に開催された半導体設計関連の国際会議「Design Automation Conference(DAC)」の関連イベントで台湾TSMCや韓国Samsung Electronics社らからEUV関連の発表が相次いだこと、(2)EUVリソグラフィー装置を開発するASML社の装置の生産性が大きく向上していること、(3)実用化の最大のネックだったEUV光源の技術にブレークスルーがあり、出力が大幅に向上したこと、の3つだ。

 (1)は、EUVの技術開発がこれまでとは異なるフェーズに移ったことの証しだという。「DACはCAD技術者が多く集まる会議。講演しても量産するとは限らない半導体デバイスの学会「IEDM」と違って、DACで登壇することは量産することが前提。DACで話した以上、後には引けない」(石内氏)。

IEDM(IEEE International Electron Devices Meeting)=毎年12月に米国で開催される半導体デバイス技術の国際会議。

 (2)について、ASML社は量産を想定した初のEUV露光装置を2017年後半に出荷する計画だ。同社はこの装置で、これまで実用化が可能になるスループットの最低ラインとされてきた85ウエハー/時を超えて100ウエハー超/時を実現できる見通しだとする(図1)。約3年前の2014年初頭の約10ウエハー/時から約10倍になったわけだ。そして、その生産性向上を支えるのが、(3)のEUV光源の出力が急速に向上してきたことである(図2)。

図1 EUVの生産性は3年で10倍超に
図1 EUVの生産性は3年で10倍超に
ASML社が2017年7月に公開した、同社製EUV露光装置の生産性を示した。近く出荷予定の製品「NXE:3400B」ではカタログ値として125ウエハー/時。実績値として100ウエハー超/時を得て、2014年第1四半期時点の10倍超になったとする。(図:ASML社の資料を基に本誌が作成)
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図2 光源の出力と稼働率が急速に実用化水準に
図2 光源の出力と稼働率が急速に実用化水準に
ASML社とギガフォトンのEUV向け光源の出力(継続時間)の変化を示した。ASML社は継続時間を明らかにしていない。ギガフォトンは現行方式では2014年時点で12Wしか出力がなかった。最新の250W実証機である「Pilot#1」では短時間では500Wも出ている。ただ、現時点では100W級で継続時間や稼働率を高める方向の開発を進めているという。(図:ASML社とギガフォトンの資料を基に本誌が作成)
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