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日経エレクトロニクス 2017年8月号

ブロックチェーン、IoTの革命児

ブロックチェーンに懸けるトヨタの深謀

  • 今井 拓司、松元 則雄
  • 2017/07/19 00:00
  • 1/1ページ

出典:日経エレクトロニクス、2017年8月号、pp.26-27(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 「GoogleもUberもいらない未来」。トヨタ自動車傘下で最先端の研究開発を手掛ける米Toyota Research Institute(TRI)社の将来ビジョンを一言で表すとこうなる。同社は2017年5月、自動運転車の開発に使う走行データの取引市場やカーシェアリングの運用などに、「ブロックチェーン」技術の適用を検討すると発表した。目標はこれらのサービスを、第三者の介在なしに実現することである。情報の所有者と利用者、サービスの提供者と顧客を直接つなぐのが理想だ(図1)。

図1 GoogleもUberも不要に
ブロックチェーン技術を利用すれば、自動車メーカーは第三者に頼ることなく配車サービスやデータの売買を実現できる。
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 価値ある情報の受け渡しにしろ、財物のシェアリングにしろ、不特定多数の参加者の間を取り持つには、中立的な第三者が必要というのがこれまでの常識だった。送り手と受け手の要望をすり合わせ、詐欺やトラブルを防ぎながら円滑にやりとりを進めるためである。この第三者は時として「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大な存在に成長し、業界を牛耳るようになる。ネットサービスの王者・米Google社や、ライドシェアで気を吐く米Uber社のように。

 TRI社の狙いは、来るべき自動運転車の時代に備えて、プラットフォーマーの台頭を抑え込むことだろう。自動運転車が当たり前になれば、トヨタの主要な事業はクルマの販売から、移動サービスの提供や顧客データの収集に広がる可能性がある。その時が来てから、第三者に主導権を握られた状況を嘆いても遅い。

 同社の頼みの綱がブロックチェーンである。各社は、「プラットフォーマーキラーになれる数少ない技術の1つ」(同技術を手掛けるベンチャー企業Nayuta 代表取締役の栗元憲一氏)と期待をかける。その裏付けが、仮想通貨「ビットコイン」の中核技術として、約8年に渡って積み上げてきた実績だ。ビットコインの世界には、金額の送り手と受け手を仲立ちする第三者も、取引を監視する専門機関も、価値を保証する中央銀行さえない。あるのは世界中に散らばった参加者が運営するサーバー群だけだ。これらが構成するネットワークと、その上で動作する暗号技術が、正しい相手に正しい金額を間違いなく送り届ける。

 この技術を使うと、ネットワーク上の取引の確実性を、現実と同等以上に高めることができる。第三者がいなくても自動車をシェアできるのは、ネット上での鍵の受け渡しを、実際に相手と会って、代金の受け取りと同時に鍵を渡す場合以上に信用できるからだ。

 ブロックチェーンの利用は、ネット上の情報を実際のモノと同じく確かな存在として扱えるようにもする。データを金庫に入れて特定の人だけに鍵を渡したり、情報が都合よく改変されていないことを証明したりできるのだ。

 これらの結果ブロックチェーンは、ネットを介して繋がった見ず知らずの人や機械の間に、高い信頼関係を築くことを可能にする。これを生かせば、プラットフォーマーの中抜きにとどまらず、従来は実現が難しかったさまざまなサービスや事業が現れうる。いずれは世界中の電子機器が貸し借り可能になったり、あらゆる情報の売買が自動化したり、初対面のロボット同士が自在に協業したりできるかもしれない(図2)。ブロックチェーンを「インターネットの再来」と呼ぶ声が多いのは、見たこともない将来が到来する予感の反映だ。

図2 人や機械を信頼でつなぐ
インターネット上ではなりすましや情報の改ざんを見分けることが難しい。ブロックチェーンはこれらを防止し、ネットワークでつながった見知らぬ人や機械の間に信頼関係を樹立できる。売り手と買い手が直接つながる物品やサービスの売買や、人手が介在しないデータの流通、機械同士の自律的な連携などが実現し得る。
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 ただし現在は「インターネットで言えば、まだWebブラウザーが出ていないくらいの段階」(ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクターの佐々木靖氏)である。ブロックチェーンの利用を拡大する起爆剤がよく見えない。だからこそ多くの企業が応用開拓に躍起になる。未来のGoogleやUberになるために。

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