欧州勢が手掛ける可変圧縮比は、2段階の可変幅にとどめる簡易式。2025年に一段と厳しくなるCO2排出量規制への対策を見据える。主にコンロッドの変更にとどめる安価な構成とし、費用対効果が高いとソロバンを弾く。FEV社やAVL社などが熱心に提案し、まずは高性能スポーツ車で実用化しそうだ。
欧州勢が、可変圧縮比(VCR)技術の開発を加速している。欧州自動車メーカーのエンジン開発に大きな影響を与えるエンジニアリング大手のドイツFEV社とオーストリアAVL社が、圧縮比を2段階で変えられる簡易的なVCRを開発。ドイツIAV社は詳細を明かさないがVCRを手掛けており、既に自動車メーカーとの共同開発に入った。
欧州勢がVCRの開発に挑む背景にあるのは、CO2排出量規制の強化だ。特に意識するのが、欧州で議論中の2025年頃の規制値。CO2排出量で68~78g/kmと、2021年の95g/kmに比べて20%超下げる方向で議論が進む(図1)。3社は「厳しい規制値で、VCRの必要性が高くなる」と口をそろえる。
FEV社とAVL社が開発するVCRは、ともにコンロッドに着目したもの。可変幅を2段階にとどめるのは、FEV社によると、欧州などの新しい燃費試験モード「WLTC(World Wide Light-Duty Test Cycles)」における走行領域の大半を、高圧縮比側だけで走れると試算するからだ(図2)。ノッキングを抑えるために、圧縮比を部分的に下げるので十分。細かく変える必要性は小さく、日産のような無段階式VCRは必要ないと判断した。2段階の可変幅にとどめれば、構成を簡単にできる。
試算の前提となるパワートレーン構成は、排気量2.0Lの直噴ターボガソリンエンジンに48V電源対応のモーターを組み合わせた簡易ハイブリッド機構。前提のコストが現段階で高そうで、複雑で高価になりがちな無段階式VCRを採用する余地は小さそうだ。