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日経Automotive 2017年8月号

可変圧縮比の全貌Part1 燃費と走りを高次元で両立

25年に熱効率50%の発電エンジン

  • 清水 直茂
  • 2017/07/10 00:00
  • 1/4ページ

出典:日経Automotive、2017年8月号、pp.42-45(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

20年以上の研究と開発を経て、日産がいよいよ可変圧縮比(VCR)を2018年に実用化する。燃費と走りの両立に加えて、超高効率な発電専用エンジンの実現を見据えた。VCRを使って、2025年頃にエンジンの熱効率を50%にする高い目標を掲げる。独自の複リンクで「超ロングストローク」を実現し、「スーパーリーンバーン(超希薄燃焼)」に挑む。

 「このエンジンはクレイジー(すばらしい)」(ドイツ大手自動車メーカーのエンジン技術幹部)―。

 日産自動車が実用化するエンジンの圧縮比を14から8の範囲で無段階に変えられる可変圧縮比(VCR:Variable Compression Ratio)技術(図1)。普段は互いに競い合う他社のエンジン技術者の多くが、日産がVCRを量産することに驚き、たたえる。

図1 燃費性能と動力性能を両立
既存エンジンのピストンを支持するコンロッドに代わって、UリンクとLリンク、Cリンクと呼ぶ3本のリンクでエンジンの爆発力をクランク軸の回転力に変換する。圧縮比を変えるときはVCRアクチュエーター(モーター)で制御軸を回し、3本のリンクを介してピストンの位置を上下に動かす。常用域では圧縮比を高めて熱効率を上げる。出力を高めるにつれて圧縮比を徐々に下げ、異常燃焼しにくくする。なお圧縮比とは、圧縮始めの気筒の容積と圧縮後の容積の比。大きいほど熱効率が高まる。日産の資料を基に作成。
[画像のクリックで拡大表示]

 VCRの研究事例は、40年以上前からある。複雑な機構で開発の難度が極めて高く、これまで実用化しなかった。日産と似た複リンク式のVCRを研究する山形大学助教の小松原英範氏は、日産のVCRに対して「研究だけにとどまり、量産できないと思っていた」と語る。

 日産はInfinitiブランドの新型SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)「QX50」を2018年に発売する。同車の直列4気筒ターボガソリンエンジン「MR20DDT」に、世界で初めてVCRを採用する。燃費性能と動力性能をともに大きく高められる。

 日産のVCRは、ピストンを支持するコンロッドに代わって備えた3本のリンクとモーターで、ピストンの上下位置を動かして圧縮比を変えるもの(Part2参照)。低中負荷の燃費性能が低くなる走行領域で、圧縮比を高めて熱効率を上げる。一方でトルクを大きくするときは過給量を増やし、圧縮比を低くしてノッキング(異常燃焼)を抑える。

 排気量3.5Lで自然吸気のV型6気筒ガソリンエンジンに比べて、VCRエンジンの最大トルクは10%超、燃費性能は27%高い。最大トルクは390N・m(最高出力200kW)に達する。

 複雑な構造のVCRの開発には、長い時間がかかった。研究に15年、量産開発に6年だ。初期に関わった技術者の多くは日産を退職。後進が引き継ぐ世代を越えた開発で、量産にこぎ着ける。

 部品メーカーの協力も大きい。中核部品のモーターと減速機で構成する「VCRアクチュエーター」を開発したのが、日立オートモティブシステムズだ。VCRエンジンの量産開発を率いた木賀新一氏(日産第一パワートレイン開発本部パワートレイン主管)は、「(日立オートが)海のものとも山のものともつかぬ段階から協力してくれたおかげで実現した」と二人三脚の開発だったと明かす。

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