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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

18種類の廃棄物を追加学習

 シタラ興産は廃棄物の種類についても、日本ならではの材質を認識できるようにした。ZRRでは廃棄物の種類や形状の認識にディープラーニングを用いているため、新規の廃棄物であっても追加学習させることで選別できるようになる(図5)。

 ZRRの認識システムは木くずやがれきといった一般的な廃棄物については、あらかじめ学習済みである。ZRRはこれまで4カ国で稼働しているため、そこでの学習結果も組み込まれていた。しかし、「日本の壁材に使われるコンクリートは海外製のものと材質が違うため、他国での学習データはうまく使えなかった」(シタラ興産)という。

 ZRRに新しい種類の廃棄物を認識させるには、その廃棄物を実際にベルトコンベア上に流すことで行う。操作パネル上で「学習する」というモードを選択し、覚えさせたい廃棄物1種類のみをベルトコンベアに繰り返し流す。

図5 世界中のロボットのデータをZenRobotics社のシステムが集約する
図5 世界中のロボットのデータをZenRobotics社のシステムが集約する
現在日本を含む5カ国でロボットが稼働しているが、国によって取り扱う廃棄物の素材が異なる。新規に識別したい素材があれば現場のベルトコンベア上に素材を流し、その画像データをZRBに送信する。ZenRobotics社がそれを基に学習させた結果をダウンロードするとその素材の識別が可能になる。 (右下の画像:サナース)
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 ディープラーニングによる実際の学習自体は、ロボットのローカルではなくフィンランドのZenRobotics社側のシステム「ZenRobotics Brain」(ZRB)で行う。学習モード時に取得した廃棄物の画像の訓練データは、インターネット経由でこのZRBに送られる。そしてZRBでのディープラーニングによる学習結果(モデル)が、再びシタラ興産のZRRに送られ、新しい廃棄物を認識・選別できるようになる。シタラ興産の場合、来日したZenRobotics社のエンジニアの支援を受けながら、新たに18種類の廃棄物を学習させた。

 フィンランドのZRBには、世界中で稼働するロボットの学習データや利用時のデータが集まる。各国のロボットの学習結果は、ZRBを介して他のロボットでも利用できる。ZenRobotics社は、このZRBを通してセンサによる認識状況やロボットハンドの状態などを常時監視している。不具合や把持の失敗などの際、すぐに対処できるようにするためだ。シタラ興産は、このZRBの利用料として1時間当たり8ユーロを支払っているという。