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人手不足解消の切り札として大きな期待を集める協働ロボット。本誌でも、デンマークUniversal Robots社の「URシリーズ」1)、ライフロボティクスの「CORO」2)、カワダロボティクスの「NEXTAGE」3-6)、スイスABB社の「YuMi」7)といった協働ロボットの導入事例をこれまで取り上げてきた。
そんな協働ロボットの中でも特に双腕型は、人が作業を思い浮かべやすい、両手での協調作業を実施しやすい、複数の作業を並行して実施しタクトタイムを確保しやすいといった利点があることから、食品分野や電機分野などで引き合いが強い。ただし、双腕型は左右2つのアームがあるため、必然的にモータや減速機などの個数が単腕型より多くなり、価格が高くなりがちだ。NEXTAGEなどは700万円以上するため、価格がネックとなって導入をためらうというユーザー企業は多い。
そんな中、大手ロボットメーカーが手掛ける協働ロボットの中で唯一、水平多関節のスカラ(SCARA)型を採用しているのが、川崎重工業の「duAro」である。通常の協働ロボットは単腕/双腕ともに1本のアーム当たり6軸以上のことが多いが、スカラ型のduAroは4軸。軸数が少ないことから、価格は他の双腕型の協働ロボットより数百万円安く、400万円強ほどだ。双腕型の中では最も手軽に導入できる機種といえる。今回はこのduAroの導入事例を紹介する。
製造後の検査工程で導入
導入したのは、栃木県に拠点を置くプリント基板製造受託、いわゆるEMS(electronics manufacturing service)の松井電器産業である注1)。電機分野の機器メーカーから設計データなどを受け取り、プリント基板に回路パターンを形成。ここにマイコンやメモリなどの部品を挿入、ハンダ付けして、発注元に納める。同社の場合、特にパチンコ台やスロットマシンといったアミューズメント機器のメーカーを多く顧客に持ち、これらパチスロ機向けのプリント基板製造を多く手掛ける。
注1)同社はパチスロ以外にデジタル家電などのプリント基板製造も手掛けている。創業期に当時の松下電器産業(現・パナソニック)と取引があったことから、創業者の姓である「山野井」の「井」と、松下電器産業の社名を組み合わせ、現在の社名とした。
今回、川崎重工のduAroを導入したのもパチスロ機向けの工程である(図1)。具体的にはプリント基板の組み立て工程の一部、および製造後の品質検査工程に3台のduAroを導入した(図2)。プリント基板の検査には複数の工程があり、それぞれ専用機があるが、その装置にプリント基板を投入する作業などを自動化した。導入費用は約2000万円。