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 日中は明るい声で売り場を案内し、夜はせっせと店内の在庫管理に勤しむ─。ヤマダ電機が店舗に試験導入した米Fellow Robots社の「NAVii」は小売店の業務を下支えするサービスロボットだ1)。在庫管理機能を実装したNAViiの最新機種は、既に米国のホームセンター「Lowe's」に導入しているが、今回その同型機をヤマダ電機が日本で初めて試験導入した(図1)。

 NAViiは対話機能を持つ自律移動型のロボットで、カメラやマイクロフォンアレーで来店客を検出し、正面の大型のタッチパネルや音声を使って売り場を案内する。客を先導して売り場まで同行するだけでなく、棚に陳列した商品の在庫を画像認識で確認したりと1台で2役をこなす。

図1 ヤマダ電機が試験導入した接客と在庫管理をこなすロボット
図1 ヤマダ電機が試験導入した接客と在庫管理をこなすロボット
2016年2月の実証に続き、米Fellow Robots社の「NAVii」を利用した。2017年3~4月に実施した実証実験では、在庫管理用のカメラを搭載した新型機に、クーポン発行用プリンタなどを搭載した。
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 今回、ヤマダ電機は横浜市にある「テックランド青葉店」でNAViiのこの2つの機能の実証を行った。店内の約3万点の商品のうち、特に種類が多いスマートフォンアクセサリーや電池など約1万点の商品の在庫管理をロボットで自動化した。営業終了の1時間前からロボットは在庫チェックの巡回を開始し、その後、開店後の夜間にかけて1万点の棚をチェック。翌朝にはチェック結果がサーバーに上がっているという仕組みだ。

接客と在庫管理の両方を支援

 ヤマダ電機が実証を行った2017年3月13日~2017年4月30日までの約1カ月半は、新生活を始める来店客で店内が賑わう家電量販店の繁忙期だ。青葉店の来店客は年間約60万人で、平日は1日に平均約1200人、休日は約3500人が訪れる。

 この時期の量販店従業員は多忙だ。商品の品出し中に来店客に声を掛けられることも多い。営業が終了した後も、店内約3万点の商品の欠品を毎日確認する必要がある。そして翌朝は、営業開始前に棚の価格表示を在庫システム上の価格と突き合わせる、「売価チェック」を行う。

 NAViiは、家電量販店などの小売店において欠かせない、この「接客」と「在庫管理」の両方の業務を支援できる。どちらか片方の業務のみを行うロボットは多くあるが、両方をこなせるロボットは珍しい(図2)。例えば、接客業務については、人型ロボット「Pepper」を始めとしたコミュニケーションロボットが数多く登場してきており、一定の効果が出始めている。ヤマダ電機も他の店舗でPepperの実証を行い、ドライヤーの商品説明をさせたところ、売り上げが3倍になるなどの実績を上げている。

図2 1台で接客と業務支援の2役をこなす
図2 1台で接客と業務支援の2役をこなす
NAViiは、売り場案内や商品説明などの接客業務に加え、従来、従業員が行っていた在庫管理作業も行う。
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 一方、店頭で在庫管理を行うロボットは、イオンリテールなどが実証に用いた米Checkpoint Systems社の「RFIDロボット」や、北米の小売チェーンが導入検討中の米Simbe Robotics社の「Tally」などがあるが、本格稼働はいずれもまだこれからだ。

 在庫管理業務を自動化しようとする際、衣料品業界などで普及が進むRFIDなどを用いれば比較的容易だが、RFIDのコストや取り付ける手間がネックとなる。画像認識技術を用いて会計レジを通ることなく商品を購入できる食品スーパー「Amazon Go」を米Amazon.com社が展開し始めたように、やはり、画像認識ベースが有望と言える。NAViiもこの路線にあるロボットだ。

約1万点の欠品を画像から検出

 テックランド青葉店は、売り場がワンフロアのみの郊外型の店舗で、規模は中程度。1階が駐車場で2階が売り場となっている。