本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 ソニーが2018年1月11日に発売した家庭向けの犬型ロボット「aibo」。同社が先代の「AIBO」を2006年に生産中止して以来、12年ぶりに復活させた新型ロボットだ(図1)。2017年11月の発表以後、数回実施された予約受付分はわずか30分ほどで完売してしまうほどの人気ぶりである。

 同じ家庭向けロボットでも、ロボット掃除機のようにユーザーの暮らしに直接役立つ「機能」を訴求するのではなく、ペットロボットとしてエンターテインメント性を打ち出すその製品コンセプトは、基本的に先代のAIBOを踏襲している。

 ただし、先代のAIBOの最初の機種「ERS-110」が発売されたのは1999年。その後、今回のaiboが投入されるまでの約20年間に起きた技術進歩は目覚ましい。単にCPUの演算性能が向上しただけでなく、オープンソースソフトウエアの組み込み用途での普及、ディープラーニング技術やクラウドの台頭、SLAM技術の確立など、特にIT面やソフトウエア面での技術革新は20年前とは歴然としている。ハードウエア面でも距離画像センサの普及などロボット工学を一新させる出来事はこの20年間に起きてはいるが、ロボットを構成する要素技術の変化として最も影響が大きいのはソフトウエア・IT面だと言えるだろう。

 そこで今回の記事では、新型aiboのソフトウエア面、IT面を徹底解剖して解説する。新型aiboの事業トップで、ソニーの「AIロボティクスビジネスグループ」の部門長を務める川西泉氏(同社 執行役員ビジネスエグゼクティブ)への取材結果を踏まえ、aiboの内部ソフト、ディープラーニング、クラウド基盤の3つの観点から、aiboの真相を見ていこう。

  今回は前編として、内部ソフトとディープラーニングについて取り上げる。


図1 aiboのセンサなどの構成
図1 aiboのセンサなどの構成
多数のセンサや22軸分のアクチュエータをわずか2.2kgの体に収めている。(写真:ソニー)
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 なお、aiboのハードウエア面については、番外編:aiboの分解写真にaibo内部の分解写真を掲載している。主要部品の構成・型番、内部構造などについては、そちらを参照してほしい。