本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 東京の恵比寿。駅からほど近いビルの一室にディープラーニング技術を世界水準で使いこなす人工知能(AI)ベンチャーがある。

 その名はアセントロボティクス(Ascent Robotics)。米国、カナダ、中国、インド、ドイツなど世界10カ国以上から集まったエンジニア約20人がディープラーニング技術や強化学習をロボットや自動運転車に生かすべく急ピッチで開発を進めている(図1)。

 ビジョンは壮大だ。カナダ出身の技術者で共同創業者チーフアーキテクトのFred Almeida氏は 「競合はDeepMind社やWaymo社、Uber社。日本の自動車メーカーと組んで世界トップレベルの完全自動運転を実現するのが当社の目標」と語る。2016年9月に創業したばかりの若いスタートアップでありながら、既に日本の大手自動車メーカー1社と契約。外資系の大手ロボットメーカーなどともディープラーニング技術を応用するために話を進めている。

 なぜ創業から1年あまりの小さなAIスタートアップが、大手自動車メーカーから契約を取り付けられるほどの存在になり得たのか。創業者経営陣の人脈・手腕などいくつかの要因があるが、最大の要因はやはり技術面にある。ディープラーニング領域の世界的な潮流をきちんとキャッチアップし、それをロボットや自動運転に生かそうとしている。