――コンテンツの作り手側の体制について教えていただけますか。

 当初は、私を含む4人ほどのメンバーで先生方に話を聞きに行き、インタビューをまとめていました。私自身がかなりの量を執筆していたと思います。でも、当時の小さなオフィスで夜な夜な必死に原稿を書いていると、この体制では長くは続かないと感じざるを得ませんでした。そこで、みんなで分担してコンテンツを作れるやり方ができないかと考えた。それ以降は、ライターとなる人材を採用し、社内で育成することを重視しています。

 現在、メディカルノートのコンテンツを執筆しているライターは女性が多いです。特に20~30代女性ですね。我々のメディアをよく見てくれている層に重なります。ライター自身の目から見て読みやすいコンテンツを、ということを心掛けています。

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 総勢20人ほどですが、必ずしも医療のバックグラウンドを持ったライターだけではありません。むしろ採用に当たっては、読者に情報を届けたいという思いと好奇心の強さを重視しています。医療の世界は日々、新しく変わっていく。そういう変化に関心を持てることが何よりも大切なんです。

 私自身は、現在ではコンテンツ全体の信頼性を担保するための仕事に力を入れています。今までご協力いただいたおよそ1300人の医師や医療従事者、さらには病院や医局、学会との連携をより強固にするべく努めています。

 こんな話があるけど面白そうだよ、と新しいネタを見つけてくることもやっていますね。私自身、人と会って取材することがとても好きなので、今も現場に出続けています。第一線の先生方の生き生きとしたお話からは、いつも大きな刺激を与えられています。

――医療情報の信頼性をめぐる昨今のさまざまな出来事を、どのようにご覧になってきましたか。

 親しみやすく、分かりやすく情報を伝える。そのことに偏りすぎた情報発信が一部でなされ、他を駆逐する構図が生まれていた側面はあるのかもしれません。信頼性と専門性、分かりやすさのバランスを失うことがないよう、我々も十分に気をつけています。

 信頼に足る医療情報を増やしていく上では、医療従事者がもっと積極的に情報を発信していくことも欠かせない。私はそう考えていますし、それをぜひサポートしたいのです。

 情報発信の重要性に対する医療現場の考え方は、以前に比べるとずいぶん変化してきたと思います。その意義がすごく認められるようになってきた。2017年9月に金沢市で開催された全日本病院学会に参加したのですが、驚きましたね。「医療機関の広報」というテーマだけで10件以上の講演があったんです。Facebookを使った広報、という演題もありました。

 医療機関も医師も学会も、情報発信の必要性をこれまでになく強く感じている。我々は、医療機関の経営コンサルティングも手掛けているのですが、医療機関や自治体の支援においても情報発信をサポートする役割が重要性を増してきました。

 こうした役割を果たしていくためにも、派手さは追わず、信頼性の高い情報を地道に、あくまでも地道に発信し続ける。これが私達の事業の根幹だと考えています。