欧米などと比べて日本では、サービスや製品のユーザビリティやUX(User Experience)に対する意識が低すぎる。こう憂うのが、小樽商科大学 社会情報学科 教授の平沢尚毅氏だ。「電子政府ユーザビリティガイドライン」の策定をはじめ長年のユーザビリティ向上活動によって、総務省の「情報化促進貢献個人等表彰」で総務大臣賞を受けた平沢教授に、情報システムのユーザビリティに関わる国内外の取り組みの実情や、自動車向けなどの組み込みソフトで使いやすさを含めた利用時の品質を上流工程で高めるための活動について聞いた(発表資料)。

平沢 尚毅氏
平沢 尚毅氏
小樽商科大学 社会情報学科 教授

――電子政府向けのユーザビリティガイドラインを策定した経緯は。

 電子政府向けのガイドラインの草案をまとめてほしいという話が来たのは、2009年の1月半ばだったと思います。3月までにガイドラインを完成したいというので、ほとんど時間がなかったんです。年度末のために、他にも2つ、3つ抱えていた仕事もあって、死ぬ気で作りました。ほとんど寝られずに血圧がかなり上がったりして。命がけだったと言えるくらいです。並行して進んでいた、電子政府のセキュリティーに関するガイドラインの作成は遅れたそうですが、こちらは何とか間に合いました。最終的には、2009年7月に正式に公開されました(取りまとめを支援したアライド・ブレインズの発表資料

 そもそもなぜユーザビリティガイドラインかと言うと、当時は平均して1%未満と低かった電子政府の利用率を高めることが目的でした(関連記事)。利用率を引き上げるには、ユーザビリティとセキュリティを改善する必要があるということでした。ただし、私のところに話が来た時点では、「(各種の手続きなどに使う)画面の設計を変えればいいだろう」といった感じだった。でも、それじゃ本質的に変わらないので、ダメだと言って、一から考えるようにしたんです。