※「新・公民連携最前線」2015年11月25日付の記事より
住民が健康で元気に幸せに暮らせる新しい都市モデル「Smart Wellness City(SWC)」構想に参加し、2014年12月に6市で始まった「健幸ポイント」(※1)の実証実験も進めている福島県伊達市。高齢者向けシェアハウスなど独自策も進めている。これら高齢化社会に向けた取り組みから見えてきたことや、地方都市ならではの課題への取り組みなどについて、仁志田昇司市長に聞いた。
――伊達市はSWCへの参加も含め、健康まちづくりに意欲的に取り組んでいます。まずは、SWCに参加した経緯を教えてください。
伊達市は2006年の合併によってできた市で、今年でちょうど10年目を迎えます(※2)。合併には、財政健全化などさまざまな目的がありましたが、私自身は、これからの少子高齢化社会に向けてサステイナブル(持続可能)な社会を作っていく観点から合併が行なわれるべきだと考えていました。
旧保原町時代に町長を務めていた際にも、高齢化社会に向けてどうすべきかという課題に取り組んでいました。若い世代が少ないですから、この町の高齢化社会は健康で元気な高齢者自らが支えていくしかない。本来、健康は個人的なものですが、ある種の社会的資産として必要な段階になってきたと考えていました。
当時はそうした考え方は先進的なものでしたから、秋田県の鷹巣町(現・北秋田市)や茨城県の大洋村(現・鉾田市)などさまざまな地域を訪れて勉強しました。そして合併後に市長となり、引き続きこの取り組みを推進していこうじゃないかと。その矢先に、筑波大学の久野譜也氏(筑波大学教授・つくばウエルネスリサーチ 代表取締役社長)から「健幸都市の運動に一緒になって取り組みませんか」と声がかかったのです。それが2009年のことです。
――参加してみてどうでしたか。
目からウロコだったのは、久野教授による「健康投資」という非常に優れた考え方です。例えば、健康診断を受けましょうという呼びかけは以前からありましたが、これはあくまでも診断の話です。病気の予防として運動をしましょうという考え方は新しいものでした。
私は以前、鉄道技術の仕事に従事しており、車両のメンテナンスを専門にしてきました。メンテナンスには大きく分けて、予防保全と事後保全の2つがあります。病気になったら治療する、すなわち、事後保全のように結果に対してコストをかけるのが医療の考え方です。
しかし、同じコストをかけるならば、我々のような鉄道技術者は、事後保全よりも予防保全に注力します。当然ですよね、走っている途中で壊れたとなったら話になりませんので。その経験に照らし合わせると、人間も予防保全のように、日常の健康増進活動に対してお金を費やしていくことが不可欠になってきます。それが、健康運動教室や、「健幸ポイント」のようなICTシステムによる健康管理という考え方に結びついたわけです。