独Molecular Health社は、遺伝子情報、臨床データといった様々な医療情報を統合したデータウエアハウスをクラウドサービスとして提供する。「SAP Healthcare Innovation Summit」の講演者として来日したMolecular Health社のVice Presidentコンテンツ管掌のMathias Göschl氏、Business Development Managerアジア地域管掌のLucia Santoso氏に、同社が提供するサービスの内容や日本での展開を聞いた。(聞き手は神近 博三=日経デジタルヘルス)

――Molecular Health社のデータウエアハウスにはどのような情報が蓄積されているのですか。

Göschl氏:分子レベルのゲノムやたんぱく質の特性、臨床試験(Clinical trias)の結果、医薬費の効果や安全性を確認するバイオマーカー、医療関係の出版物、医薬品の副作用など膨大な情報を最新の状態で蓄積しています。このデータウエアハウスのプラットフォームとなる「Nucleus」は、世界で最も包括的な医療情報データベースの1つと言えるでしょう。

――どのような顧客に向けたサービスになるのですか。

Santoso氏:医療機関、製薬会社などです。Nucleusのプラットフォームを使ったデータウエアハウスのサービスは3つあります。がん患者のゲノム情報に基づいて適切な治療方法を調べる「TreatmentMAP」、医薬品の副作用情報を調べる「SafetyMAP」、それにコホート研究によって得られた大量のゲノム情報の分析を支援する「InsightMAP」です。がんの臨床医は、TreatmentMAPを使って効果が高いと考えられる治療法を調べたり、SafetyMAPを使って医薬品の副作用情報を事前にチェックしたりできるようになります。TreatmentMAPとSafetyMAPは商用サービスを2014年に開始しました。InsightMAPは2016年中に商用サービスを開始します。

Göschl氏:一般企業向けに、がんに罹病した従業員とその配偶者を支援するプログラムも提供しています。「COPE(Corporate Oncology Program for Employees)」と呼ばれるもので、すでに独SAPや米EMCドイツ現地法人が福利厚生メニューに組み込んでいます。これはTreatmentMAPを使って、従業員ががんの適切な治療法を選択する手助けをするものです。

Molecular Health社のLucia Santoso氏(左)、Mathias Göschl氏(右)
Molecular Health社のLucia Santoso氏(左)、Mathias Göschl氏(右)