全面自由化で変わる電力市場を監督する新規制機関、電力取引等監視委員会が2015年9月に立ち上がった。欧米でも自由化市場における規制機関の役割は大きく、国内でも同委員会が自由化の成否の鍵を握っていると言っていい。そのトップに、かねて発送電分離や独占力の排除を主張し続けてきた経済学者の八田達夫氏が就任。日本の電力市場が目指す姿を語った。

――かねて発送電分離を主張されてきた八田さんが、市場監視の責任者に就かれた。目指すものは何か。

八田 達夫(はった・たつお)氏
八田 達夫(はった・たつお)氏
1943年生まれ、66年国際基督教大学卒業。経済学者として大阪大学教授、東京大学教授、政策研究大学院大学学長などを経て、2015年9月に電力取引監視等委員会の初代委員長に就任。 写真:宮原 一郎

八田 2つある。第1は不必要な参入障壁の撤廃だ。参入の自由を認めることでコストの引き下げを目指す。

 第2は市場で価格メカニズムを十分に機能させることだ。価格メカニズムは、停電抑止にきわめて有効な機能を発揮することになる。

 価格メカニズムを機能させるためには、需要や供給のインバランスを精算する方法として計画値同時同量制度の導入が不可欠だ。電力取引の当事者たちに計画発電量や計画需要量をあらかじめ報告させた上で、給電指令所が事後的に実績値と計画値とのインバランスを時価で精算する。