住まい、医療、介護、生活支援、介護予防を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」。そこには、介護保険などの公的サービスだけではなく、ボランティアや住民主体の活動である「互助」、民間サービスである「自助」の充実も不可欠だ。しかし、特に介護分野においては、介護保険内サービスと民間サービスを併せて高齢者に提供することが必ずしも進んでいない。その状況を打破すべく、2016年3月末に経済産業省と厚生労働省、農林水産省が連名で策定したのが、「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集」(保険外サービス活用ガイドブック)である。同ガイドブック作成にも携わった、経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課 課長補佐の富原早夏氏に話を聞いた。

(写真:皆木優子)
(写真:皆木優子)
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──「保険外サービス活用ガイドブック」を策定したキッカケを教えてください。

 医療・介護に関する課題は、高齢化などによって多様性を増しています。既存の医療保険や介護保険などの公的サービスだけで、そのすべてに対応することは簡単ではありません。

 例えば、「本当に受診すべき人が来院しているのか」「病気や要介護度が改善した後、適切な食行動、運動行動をとっているか」といった課題に対しては、「本当に受診すべき人をあぶり出す機能」や「改善後も食行動や運動行動をサポートする機能」などを備えるサービスが必要になります。しかし、病院やクリニックなどが個々にそれらに対応したサービスを提供するのはかなり厳しいといえるでしょう。

 そこで望まれるのは、さまざまな関係者が連携して地域で医療・介護を支える体制です。この体制を作るために、経済産業省では各自治体に対して「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」の設立を呼び掛けています。これは、自治体と地域のヘルスケア事業者や金融機関、医療機関などが連携する場で、これまでに全国で28協議会が設置されています(2016年5月時点 )。

 こうした連携を円滑に進めるためには、必要な情報やノウハウを必要とする事業者と自治体の担当者にしっかりと伝える必要があります。保険外サービスを提供しようとする当事者が判断に迷うことは、スムーズな連携の足かせとなるからです。

 今回、ガイドブックという形で先進事例をとりまとめた目的は、まさにそこにあります。関係者のスムーズな連携により、保険内サービスに+αとしてさまざまな保険外サービスが併せて提供され、さらには、今までにない豊かなサービスが生まれる可能性もあるでしょう。