瀬戸大橋のお膝元で、工業都市として有名な香川県坂出市。だが2015年の国勢調査によると、同市の人口は約5万3000人と5年前に比べて5%近く減った。3期目を迎えた綾宏市長は、「住みたいまち」づくりを市政の最重要テーマに掲げ、市立病院の新築・移転をはじめ、様々な施策を打ち出してきている。「健やかに」そして「幸せに」暮らせる「健幸のまち」が目標だ。

(撮影:菊池一郎)
(撮影:菊池一郎)
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――「健幸」に暮らせるまちづくりを市政の方針に掲げていますね。

 ええ。今年2月にできた日本健幸都市連合にも加盟しています。これまでにも、健康づくりに取り組もうという自治体が集まる団体に関心を持ったことはあるのですけれど、大きな広場で運動しようというような趣旨で、坂出のような小さい自治体にはちょっと合わないと思っていました。一方で、私は幸福度についても研究しており、各種のランキングも興味を持ってながめていました。

――その一環として、市立病院の新築・移転を実現しました。

 坂出市立病院は、全国でも数少ない黒字の自治体病院でした。前の市長の時代に、「赤字を出したら潰す」と、徹底した経営改革が行われたからです。一方で老朽化・狭隘化しており、耐震性にも問題があって、サービス面での評価は高いとはいえませんでした。人口5万人少々の坂出市には、市立病院のほかに、400床近い民間の大病院、カトリック系の病院など主な病院だけで3施設あります。厚生労働省の立場からすればそんなにいらないだろうということになるでしょうね。病院とか介護施設がたくさんあると、やはり住民は気軽に行ってしまい、結果的に医療費が高くなって医療費削減を進める国の政策に逆行しますから。気軽に受診すれば精神的な面を含めて疾病の予防になると思うのですが。

――自治体病院ならではの役割が必要です。

 市立病院は何をすべきなのかという課題はあります。24時間体制で救急を手がけ、診療科も増やしてきたので、異常を早期に発見して治せるものは治します。一方近隣の市には、労災病院や子供専門の病院があるので、お互いに機能を分担していきたいと考えています。また、こうした近隣の病院で治療を終えた患者を受け入れるのも大切な役割でしょう。そのほか、市内に離島があるので、巡回診療に行くのも大事な役割だと考えています。