――遠隔診療はこれからの医療においてどのような役割を果たすか。まずは、この点についての考えをお聞かせください。

 外来と入院、在宅という医療の3つのカテゴリーと、遠隔診療はどのような関係にあるか。まずはこの点から考えてみたいと思います。

 このうち遠隔診療とのかかわりが深いのは、外来と在宅です。そして、遠隔診療と外来は互いに行き来できる、つまり組み合わせが可能ですし、遠隔診療と在宅の関係もそうです。外来の一部が遠隔診療であってもいいし、在宅の一部が遠隔診療であってもいい。つまり現行の医療と遠隔診療は、相容れないものではなく共存するということです。

 外来医療や在宅医療の現在のあり方は、決して理想的とは言えないでしょう。外来であれば、患者が病院を離れた場でどのようにすごし、服薬にどう向き合っているかといったことはよく分かりません。時間や空間の制約を受けざるを得ない。在宅についても、都市部はまだしも地方では医師が不足しており、患者の自宅に足を運ぶ余裕がないというケースは少なくありません。

 遠隔診療は、こうした課題にアプローチできるのではないかと考えています。外来医療や在宅医療の弱点を補い、医療の質を高める手段になれる可能性がある。

 医師と患者のコミュニケーションを考えてみても、患者が自分の状態をうまく言葉で伝えられないことは少なくありません。家族の付き添いがほしい場面ですが、それができないこともあります。遠隔診療はこうした場面でも価値を発揮するでしょう。オンライン化して患者とのタッチポイントを増やすことが、これまでは得られなかった患者の情報を得ることにつながります。患者の病態をトレンドとして見られるようになるわけです。

 医療の質と財政的負担は、一般には対立関係にあると捉えられていますよね。医療の質を高めようとすればするほど、医療費がかかる。そうではなくて、患者と医師、国にとっての“3方よし”を実現する手段はないだろうか。その一つの答えになる可能性があるのが、遠隔診療ではないでしょうか。医療をめぐるエコシステムの中で、こうした観点から遠隔診療のポジションをうまく見いだせるのではないか。そう私は考えています。