――何らかの新たなシステムを導入していく上で、それをいかにして持続的なものにしていくのか。これも座談会での話題の一つとなりました。

 必要なのは、創意工夫を促す仕組みや制度ではないでしょうか。普通は、何かを提供したらそれにお金が支払われる。でもこれは、極端に言えば、創意工夫がなくてもできてしまう仕組みなんです。そうではなくて、限られた財布(制約)の中でいかにコストを下げられるか、それに対して何らかのメリットを得られる仕組みが必要です。

 患者の側としても、医療も介護も無鉄砲に買えるものではなく制約があった上で、日々の生活の中で工夫をしていかなければ結果として自分に不利益がくるといった仕組みが求められます。人間はそれなりの状況に追い込まれたら、いろいろと創意工夫できるんですよ。

 どこまでの制約ならサステナブルであるかというゴールをまず決めて、そこに蓋をかぶせる。その中で創意工夫して、医療従事者も患者も行動変容していくような仕組みをつくっていくべきだと考えます。

むとう・しんすけ
むとう・しんすけ
1996年東京大学医学部卒業。2002年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。2014年INSEAD Executive MBA。東大病院、三井記念病院にて循環器内科、救急医療に従事後、宮内庁で侍医を務める。その後McKinsey & Companyを経て、2010年に在宅医療を提供する「祐ホームクリニック」を設立(2011年に法人化し、医療法人社団鉄祐会となる)。2015年には、シンガポールで「Tetsuyu Home Care」を設立、同年8月よりサービスを開始。2016年にインテグリティ・ヘルスケア代表取締役会長に就任。東京医科歯科大学医学部臨床教授、厚生労働省情報政策参与、日本医療政策機構 理事。
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