――全体最適を図るような主導権は、日本では誰が握っていくべきなのでしょうか。

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 基礎自治体と医師会ではないでしょうか。国がやるには遠すぎるので、やはり自治体。そして医師会については、もちろん職種としては訪問看護師や薬剤師などの役割もものすごく重要だとは思うのですが、じゃあ意思決定まで担えるかというと、まだまだ厳しい。むしろ、サービスのユーザーでもある患者が、現時点ではまだ医師に期待しているという事実もあります。もちろん、今後どうなるか分かりませんが。

 最近では、在宅医療について区(自治体)単位で協議会を作ったり窓口を作ったりしていますし、医師会もさまざまな協議会を作るようになってきています。良い方向に進んでいるとは思います。

――今回の座談会では、医療を担う各職種と患者の情報連携のハブになる「医療コンシェルジュ」の設置という提案が参加企業からあり、大きな議論の一つとなりました。

 コンセプトとしては非常に重要なものだと思います。昔であれば、かかりつけ医、それこそ患者の家族のことまで良く知っている医師が医療コンシェルジュだったのかもしれません。しかし、今の時代は、患者が必要としている情報が非常に専門的になってきています。特定の誰かが自分の知識の範囲内で患者に対応することが難しくなっているのです。

 だからこそ、さまざまなプレーヤーが情報共有しながら高齢者(患者)の生活を支えていきましょうという地域包括ケアシステムの概念があるわけで、医療コンシェルジュというものを現実的な形として作っていこうという狙いだと思うのです。しかし、このシステムをきちんと構築できているところもあれば、そうでないところもあります。知識の偏在もありますから、本当にその情報が必要な人に情報を届けられていない実情もあります。

 ICTが真に貢献できるポイントは、ここにあるのではないでしょうか。個別化された情報を集めて、その人(患者)に合った情報をきちんと提供する仕組み。そこに可能性を感じます。例えば、我々医師がケアマネジャーの知識を得ること、逆にケアマネジャーが医師の知識を得ることは現実的ではありません。少なくとも知識の部分は、人によらない、ICTで補完してあげる仕組みが必要だと思います。