世界の有害化学物質規制が強まっている。新興国も欧米や日本と同様の有害物質規制を導入しつつあるのに加え、RoHS指令などの既存の規制では規制対象の化学物質が増える傾向にある。ビジネスのグローバル化に伴いますます対応が難しくなる有害化学物質規制。規制の現状と注意すべき点について、UL Japan UL Environment Business Development Manager 追谷 武寿氏に聞いた。(聞き手は吉田 勝)

UL Japan UL Environment Business Development Manager 追谷 武寿氏に聞く
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 有害化学物質規制を中長期的な視点で見ると、前回紹介した4物質以外のフタル酸エステル類にも注意が必要です。実は、子ども向け製品では、早い段階から多くのフタル酸エステル類が規制対象となっていますし、REACH規則でも既に15物質のフタル酸エステル類が使用制限の対象となっています。米国の消費者向け製品の製品安全「Consumer Product Safety Improvement Act」(消費者製品安全改善法)でも、玩具に含まれるフタル酸エステル類6物質が規制対象で、2016年度中にはさらに2物質増えて8物質となる見込みです。電気製品でこれらの規制に追随して、規制対象のフタル酸エステル類が増えていくことは間違いないでしょう。

 今、大手メーカーはRoHS指令の動きに合わせ、原材料メーカーに対して材料の変更を要求している段階で、代替材料のメドはついているようです。しかし、移行の過渡期においては、使用量が少ない代替材料はコスト高なためどのメーカーも頭を痛めています。

面倒なフタル酸エステルの検出

 もう1つやっかいなことがあります。それは、フタル酸エステル類の有無を自社では検出しにくいということ。これまでRoHS指令で規制していた6物質は、蛍光X線分析計で検出できました。蛍光X線分析計は、扱いが容易で多くのメーカーが自社で保有していますから、自社で分析するときの有効な手段です。例えば臭素系難燃剤の化合物の規制でも、臭素が入っているかどうかは蛍光X線分析にかければ簡単に分かります。

 ところが、フタル酸エステル類の有無は、蛍光X線分析では検出できないのです。フタル酸エステル類には特徴的な元素が存在しないからです。炭素や水素といった元素を検出してもそれがフタル酸エステル類由来かどうかは分かりません。化合物としての特定が難しいのです。