「救急車にiPad」――。救急医療におけるICT活用の先行事例として、こうした取り組みが佐賀県で進められたことは業界内でよく知られている。佐賀県内の全ての救急車にタブレット端末を配備し、救急現場の可視化を図ったのだ。その後、このノウハウは全国に広まり、今では10の府と県が救急車にタブレット端末やスマートフォンを配備している。

 佐賀県がこの取り組みを始めたのは、2011年4月のこと。iPadが国内発売されて、まだ間もない時期である。そんなタイミングで、他の都道府県に先駆けて佐賀県が着手することに対しては、現場からの反対の声も多かったという。

 こうした中、当時としては先駆的な仕組みの導入を推し進めたのは、そのわずか1年前に医務課に配属になったばかりの一人の県庁職員、円城寺雄介氏だった。

佐賀県 政策部 企画課 企画担当 係長の円城寺雄介氏(写真:諸石信、以下同)
佐賀県 政策部 企画課 企画担当 係長の円城寺雄介氏(写真:諸石信、以下同)
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 その際、円城寺氏がお手本にしたのは、江戸時代末期に佐賀藩主を務めた鍋島直正氏だったという。歴史から何を倣い、前例のない事業を生み出すに至ったのか。そして、「救急車にiPad」の次に描く未来はいかなるものなのか――。明治維新から150年を迎える2018年に向けて、盛り上がりを見せる佐賀県庁で聞いた。

(聞き手は伊藤瑳恵=日経デジタルヘルス)