2016年3月、ベンチャー企業のWHILLは、同社の電動車椅子「WHILL Model M」が米国食品医薬品局の認可を受け、医療機器として販売可能になったと発表した。これを受けて、いよいよ本格的に欧米の市場開拓に乗り出す。同社は、さらに先の用途も見据える。自動運転や人工知能の技術も取り入れ、「歩道のGoogle」の座を目指す。

(写真:加藤 康、以下同)
(写真:加藤 康、以下同)

 「WHILL」の出荷を本格的に始めたのは2015年4月です。それから2016年の3月までで、オーダーと出荷と合わせて約500台。大体予想どおりですね。これまでは日本が中心で、アメリカと欧州はこれからです。先日、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の認可がようやく下りましたので。米国ではFDAの認可がないと、マーケティングができないんです。例えば、高齢者や障害者の方々の雑誌に広告を載せられないし、そもそも障害者や高齢者が乗っている写真を公開できない。それだけで「メディカルデバイスだろう」と言われてしまう。米国は本当に厳しくて、WHILLのアームレストは日本ではほとんど全ての人に必要なんですが、これが付いているだけで医療機器と見なされてしまう。

 なので、これまでは試験販売のようなかたちでした。1年半くらいかけて、ようやく認可を取り終えて。ちゃんと販売を開始できるのが2016年の初夏ですね。マーケティングは3月の終わりから始めます。受注はそこから受けられますが、あまり伸びないと思っています。市場にWHILL Model Mが到着するのは初夏になるので。このような製品はクリック一つで販売できるとは思っていないです。今はこのように騒がれていますけれど、まだまだこれからです。今期の販売目標は出さないようにしています。

 欧州には「CEマーキング」があるので、取得するように動いています。ただ、試験項目は(FDAの場合と)同じものが多いです。日本には米国のような規制はないですね。日本では、WHILLは医療機器ではなく福祉機器になるんです。先進国の中で最も規制が緩いです。パーソナルモビリティーとか、セグウェイとかは規制があって走れない所がありますが、この業界は逆なんです。だから、新しいことを始めるのもやりやすい。この大きさとか、スピードが電動車椅子の規格なので、そうカテゴライズされるんですね。