「メディカルイラストレーター」と呼ばれる専門職が存在することをご存じだろうか。医学分野の学術論文や教科書、図鑑、プレゼンテーション資料などに載せる、臓器や骨格、術式などを説明するビジュアルを専門に手掛けるイラストレーターだ。医学とアート、双方の高度な知識と技術が求められる。

 医療現場でビジュアルが活躍する場面は、確実に増えている。専門家同士のコミュニケーションや教育、患者に対するインフォームドコンセントなどに欠かせないものとなりつつある。

 にもかかわらず、メディカルイラストレーターという職業は、日本ではほとんど知られていない。わずか数十人が活動しているのみで、専門の教育課程も存在しない。

獣医師・メディカルイラストレーターのtokco氏(写真:加藤 康、以下同) 
獣医師・メディカルイラストレーターのtokco氏(写真:加藤 康、以下同) 
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 恵まれているとは言えない環境のもと、日本で唯一の“獣医師資格を持つメディカルイラストレーター”として活躍の場を広げているのが、tokco氏だ。2013年にメディカルイラスト専門の制作会社「レーマン」を設立。医療従事者や大学、研究機関、医療機器メーカー、出版社などからの多種多様な依頼に日々向き合っている。自らの仕事の幅を広げていくのと同時に、メディカルイラストレーターという存在を世に広く知らしめ、この職業を日本に根づかせることが大きな目標という。

 獣医師、アーティスト、そして経営者。3つの顔を持つ同氏に、メディカルイラストレーターという職業に懸ける思いを聞いた。

(聞き手は大下 淳一=日経デジタルヘルス)