訪問看護師のブランド価値を高める

――具体的な全国拡散の計画と、その際に医療ケアに従事する人材をどうやって確保するのかを教えてください。

 まずは向こう3年間で、東京、名古屋、大阪で10カ所ずつ、合計30カ所に訪問看護ステーションを設置する予定です。現在の訪問看護ステーションはギリギリの中小零細運営がほとんどです。満足な休みもなく、事務作業も含めてすべてを自分たちで補っているため、1人抜けたら潰れてしまうリスクを抱えています。また日本特有の問題として、訪問看護師を含めた在宅医療の地位が低く見られる傾向が強い。そこでしっかりとしたキャリアパスを示し、訪問看護師のブランド価値を高めてプライドを持って働ける仕組みを構築したいのです。主なターゲットは、かつて病院勤務をしていたけれども現在は休止している看護師になります。

 ここで大事なのが、目的はハード運営ではなく、各地域に訪問介護ステーションの輪を広げていく点にあることです。我々は先に述べたノウハウの共有に加え、ルート設定やシフト編成、総務や経理などの事務作業を代替するソフトプロバイダーとして機能する「スペシャリティーケアステーションIWAOモデル」を構築する予定です。煩雑なバックオフィス業務を我々が一括で代行することができれば、訪問看護師は看護に集中でき、時間に余裕も生まれ、参加する看護師が増えれば長期休暇も取れるようになる。しかもキャリアパスが描けるとなれば、休眠している看護師たちばかりではなく、既存の病院の看護師たちも取り込めるようになるでしょう。

これからの訪問看護ステーションのイメージ(図:岩尾氏の資料から)
これからの訪問看護ステーションのイメージ(図:岩尾氏の資料から)
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 東名阪に設置する直営の30カ所は訪問看護師の信用や知名度を得るための基盤です。事業のブランド化のために、上場も視野に入れています。このようにして、訪問看護師のステータスを上げていきたいのです。この方式がフランチャイズ展開して大きく育ったら、病院の代わりになるような医療体制を築ける可能性はあると思います。

 コンセプトとしては、各地の小さなステーションが直径3kmぐらいの範囲を管轄し、街そのものを“病院”にしていくという考え方です。地域によって生活習慣や風習は異なりますから、何よりもそれぞれのステーションが地域に密着していることが重要になってきます。