IT(情報技術)でファッション業界を変えようとしているスタートアップ企業が、米シリコンバレーにある。インターネット上でカスタムメイドシャツの販売サービスを手掛ける米Original社である。同社は2017年3月14日に、アパレルや小売企業向けにカスタムメイドシャツ販売の仕組みを提供するクラウドサービスを開始した。そのサービスには、画像認識による自動採寸技術を活用している。同社の事業とITがつくる未来のファッション業界の姿について、同社Founder & CEOのJin Koh氏に話を聞いた。(聞き手は内山 育海)

――まず、Original社の事業について教えてください。

Original社 Founder & CEOのJin Koh氏。
Original社 Founder & CEOのJin Koh氏。
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 「全てのクローゼットにカスタムシャツを」というモットーを掲げ、2014年4月から日本と米国でカスタムシャツの通販サービス「Original Stitch」を展開してきました。ユーザーはインターネット上で400種類以上の生地、多様なデザインの袖、襟、ボタンなどを自由に選択して、10億通り以上の組み合わせから自分だけのシャツをデザインできます。我々は店舗や工場を持たず、提携する日本国内の縫製工場と提携して製造しています。現在、日本に約8万3000人、世界では約35万人の会員がいます。

――カスタムシャツ事業を始めたきっかけは。

 きっかけになったのは、私自身が抱えていた「服を買いに行くのが好きではない」というフラストレーションです。家電製品や音楽はインターネット上で買えるのに、衣服は未だに多くの人が店舗に足を運び、めぼしい服を探して試着してから購入しています。自分の欲しいシャツを手に入れることが、なぜこんなに難しいのか。この仕組みを変えようと思ったのです。

カスタムメイドシャツ販売サービス「Original Stitch」のWEBサイト。生地やボタン、襟などのデザインを多様なラインアップから選べる(画像はOriginal社のWEBサイトからキャプチャー)
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カスタムメイドシャツ販売サービス「Original Stitch」のWEBサイト。生地やボタン、襟などのデザインを多様なラインアップから選べる(画像はOriginal社のWEBサイトからキャプチャー)
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カスタムメイドシャツ販売サービス「Original Stitch」のWEBサイト。生地やボタン、襟などのデザインを多様なラインアップから選べる(画像はOriginal社のWEBサイトからキャプチャー)

――2017年3月14日には、アパレルメーカーや小売業者向けにカスタムシャツの受注や生産、配送を支援するプラットフォームを発表しましたね。

 「Original Stitch カスタマイズ・プラットフォーム」は、企業のカスタムシャツ販売を支援するためのクラウドサービスです。シャツのデザインをカスタムできる機能、注文管理、決済管理などのインターネット上でのカスタムシャツ販売に必要なアプリケーションに加えて、当社が提携する工場での生産、顧客への配送までを提供します。現在は日本の工場のみと提携していますが、将来的には米国の顧客には米国内の工場から製品を供給するつもりです。現地生産の方が物流のムダが少なく、持続的なシステムにつながるからです。