──医療用3次元CGを手掛けることになった経緯を教えてください。

 医療用3次元CGとの出会いは中学2年生のことでした。NHKの番組で「驚異の小宇宙・人体Ⅲ 遺伝子・DNA」という番組を見て、CGを使った遺伝子やDNAの説明に引き込まれました。その少し前、1993年に映画「ジュラシックパーク」が公開され、CGのすごさを目の当たりにしていましたが、恐竜以外にこんな使い方があるのかと感動したことを覚えています。

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 高校生のときには、このNHKの番組を補助教材として使用した授業を受けました。きちんと中身が分かっている人がCGというツールを使うと、かっこいいだけではなくて役に立つものなのだと実感しました。それがきっかけとなり、医療教育のテレビ番組の制作にプロデューサーやディレクターとして携わりたいという夢を抱くようになります。

 その後、東京大学医学部医学科で6年間を過ごし、大学2年生のときにはデジタルハリウッド(専門スクール)で1年間CGの基礎を学びました。

 医師になりたての1、2年は、知識レベル的に半分医師、半分患者のような立ち位置です。そんな時、医師が一生懸命説明している場面でも、患者は理解できていないのではないか、と思う場面に遭遇することがままありました。医師は説明するツールがないため、紙に一生懸命図を描いて説明するのですが、患者には伝わりません。誰にも悪気はないのですが、そういう現実は確かにあります。

 さらに、臨床現場でのCTやMRIの使われ方を目にし、3次元CGがもっと患者に近いところで有用なのではないかと思うようになったのです。立体的に見られることが、診断や治療、患者への説明に使えると思いました。次第に、医療用CGはテレビ番組だけがゴールではないと思うようになります。

 そこで2011年に設立したのがサイアメントです。以来、研究成果のアウトリーチ(啓蒙)や薬が作用するメカニズムの説明、患者への説明教材などを手掛けてきました。