超小型衛星で、宇宙利用産業に切り込むアクセルスペース(東京都千代田区)。ウェザーニューズ専用衛星「WNISAT-1」や「ほどよし1号機」の開発を経た同社の次なる一手は画像を用いた地球観測サービスだ。自社の衛星群で撮影した画像の解析結果を、農業など様々な分野のエンドユーザーに提供する。米Apple社のようなプラットフォーム戦略を推し進め、衛星を使った地球観測サービスの標準インフラになることを目指す。同社代表取締役・中村友哉氏のインタビューの後編は新事業の展望を語ってもらった(聞き手=中道理、今井拓司、根津禎)(前編はこちら)。

アクセルスペースの中村氏(写真:加藤 康、以下同)
アクセルスペースの中村氏(写真:加藤 康、以下同)
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 創業以来、専用衛星の開発で頑張ってきましたが、それだけでは利用する企業が数百社も出てくるとは思えません。我々が起業した目標は超小型衛星の利用を爆発的に広げることですが、このままでは実現できない。みなさん興味は持ってもらえるんですが、衛星を持つリスクはやっぱりまだ大きいんです。(製造コストの)桁が二つ下がったとはいえ数億円ですから。そこで、我々自身が衛星を持って、そのデータをユーザー企業に使ってもらう形を考えました。2015年12月に発表した「AxelGlobe計画」です。

 まずは、今できてない価値って何だろうと考えました。実は米Skybox Imaging社や米Planet Labs社が、我々と同じように衛星をたくさん上げて地球の画像を撮って観測しましょうと言い始めていた。Skybox社は分解能が1mを切る高精細な画像で都市部を撮って、例えば「Googleマップ」などを高頻度に更新するといった用途のようです。一方、Planet Labs社は、都市部に限らず全世界のカバーを考えているようで、こちらはCubeSatレベルの小さな衛星を使うらしい。

 じゃあ我々はどう違う価値を出せるのか。Skyboxと比べると、だいぶ低コストなので同じインフラを作るにしても非常に安くできそうだ。全球をカバーして毎日くらいの高頻度で撮影すればかぶらない。Planet Labsは衛星が小さすぎて、画像の解像度が解析に堪えないだろう。我々は「ほどよし」の経験から、ちゃんと買ってもらえる画像データの基本的なノウハウもあるので、勝てるんじゃないか。そこからコンセプトを膨らませていって、50基の衛星があれば世界中の人間が経済活動を行っているエリアは毎日撮れます、となったんです。