世界各国で宇宙利用が活発化している。日本でも政府が音頭を取り、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や大企業が事業を推進するなか、2008年設立のベンチャーがこの分野で気を吐いている。商用の超小型衛星を開発・製作するアクセルスペース(東京都千代田区)だ。同社は2013年、民間企業として世界初の商用超小型衛星を打ち上げた。2015年12月には、地球観測画像データ事業への参入を発表。超小型衛星群で1日1回撮影した全世界の画像を提供する、世界でも先駆的な事業だ(関連記事)。宇宙利用の市場を果敢に攻める同社創業者で代表取締役を務める中村友哉氏に、起業前からの道のりや自社の強みを聞いた。(聞き手=中道理、今井拓司、根津禎)

アクセルスペースの中村氏(写真:加藤 康、以下同)
アクセルスペースの中村氏(写真:加藤 康、以下同)
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 私が進路を航空宇宙工学に決めたのは、大学2年生のときです。中須賀先生(東京大学工学系研究科 教授の中須賀真一氏)から研究室の学生たちで超小型衛星を作るという説明があり、衝撃を受けました。人工衛星は、国の主導で優秀な技術者が何百人と集まって作るものだと思っていましたから。学生が衛星作りに参加できるということにわくわくして、航空宇宙工学科に進むことにしました。それまでは、衛星作りをやるとは全く思っていなかった。サイエンスとしての宇宙は好きだったんですが。

 

 研究室では「CubeSat」(外形寸法10cm3の超小型衛星を開発・打ち上げ・運用する教育用プロジェクト)作りに取り組みました。本格的にものづくりをしたのは、そのときが初めてで、とにかく面白かったですね。作る喜びは他の物でも味わえますが、衛星は宇宙へ行きます。約1年かけて作ったものが、ロケットで自分の手の届かないところ(宇宙)へ飛んで、自分が設計した通りに動いて、例えば地球の写真を撮って送ってくる。興奮しますよ。苦しい思いをして作った衛星から初めて信号を受けた瞬間は、とても感動的でした。

 

 卒業までに衛星作りに3度参加しましたが、1度経験すると、次の衛星に反省が生かされて、だんだん性能が上がっていくんです。それもまた楽しくて、卒業後はこういう仕事をしたいと思うようになりました。大学を中心に世界中でCubeSatプロジェクトが広がっていたんですが、あくまで教育用で実用的な超小型衛星はまだ出てきていなかった。我々が技術レベルを上げてきたという自負もあって、やっぱりこれで仕事をしたいという思いが非常に強かったんですね。