大槻 SDPの主要顧客でテレビブランドの米VIZIO社は、米Costco Wholesale社のような販売コストが低い流通チャネルを開拓し、米国第2位のシェアを保持しています。技術開発は、Foxconn社を含めたサプライヤーに丸投げと言っていい状態です。Foxconn社は、こうした協業を求めていくのですね?

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

郭氏 米国とシンガポールに本社を置くFlextronics社、米Jabil Circuit社、米Celestica社などをEMSと呼ぶことは、まだ差し支えないでしょう。プリント基板や電子機器のアセンブリーが業務の中心ですから。しかしFoxconn社はとうにEMSではありません。量産よりもっと上流工程を任せてもらっています。

 サービス業態は、広い方から順に以下のように表現できます。IIDM(innovative integrated design manufacturer、商品企画以降を受託)→IDM(integrated design manufacturer、基本設計以降)→ODM(original design manufacturer、詳細設計以降)→JODM(joint original design manufacturer、ブランド企業の監修による詳細設計以降)→JDSM(joint design manufacture、ブランド企業の指導による詳細設計以降)→JDVM(joint development manufacture、ブランド企業の監修による量産以降)→OEM(original equipment manufacturer、ブランド企業の指導による量産以降)注6)

注6)OEMは本来ブランド企業を指すが、実際には郭氏が用いたようにブランド企業の指導に準じて単に製造すること、あるいはその企業を指す場合がある。

 先ほどBlackBerry社との協業を紹介しましたが、これはIIDMサービスを提供するものです。アジアでの販売や顧客サポートにもFoxconn社は関与していきます。私たちはInfocusというブランドを付けたスマートフォンを企画から販売まで一貫して手掛けていますが、これはIIDMサービスの提供能力を高めます。

 顧客の要望に基づいてIIDMよりも狭いサービスももちろん提供していきます。例えばVIZIO社や米Motorola Mobility社はIDMサービスを、米Hewlett-Packard社や米Dell社のサーバー部門はODMサービスを、米Apple社はJDSMサービスを利用するでしょう。

 Foxconn社は、電子商取引プラットフォームも提供していきます。中国で消費者向けの「富連網」(旗艦店名は天猫、http:// tmall.com/)をオープンしました。間もなく精密機械業者向け資材やコネクタ、ケーブルなどを販売する法人向けの「富金機網」(http://b2bFoxconn.com/)の運営も始めます。こちらでは将来QNXを用いた工業用ロボットも扱うことになるでしょう。