福島県いわき市を中心に人工透析、泌尿器疾患などの診療を行う公益財団法人ときわ会。その中核施設である常磐病院で2016年1月、電子カルテ、医事会計システムなど個別のシステムからデータを収集して、臨床研究や経営改善に役立つ各種指標を生成する情報系システムの稼働が始まった(関連記事「常磐病院、DWH構築で経営指標の作成期間を大幅短縮」)。常磐病院院長の新村浩明氏や同病院情報システム課課長の木村智紀氏にシステム構築の目的と今後の展開を聞いた。
(聞き手は神近 博三=日経デジタルヘルス)

――情報系システムを新規開発した狙いを教えてください。

新村:常磐病院では電子カルテ、医事会計システム、物流システム、透析管理システムなど複数のシステムが稼働しています。これらのシステムはそれぞれ別々にデータを管理していますので、臨床研究や経営改善の指標を算出しようと思ったら、個々のシステムから必要なデータを集めて表計算ソフトに入力し、手作業で分析しなければなりませんでした。

 それでは大変だということで、各システムからデータを取り込んで一元的に管理するDWH(データウエアハウス)基盤を構築し、それにDWHのデータを分析するBI(Business Intelligence)ツールを組み合わせた情報系システムを構築しました。DWH基盤には日本オラクルのデータベースアプライアンス「Oracle Database Appliance」、BIツールには医用工学研究所の「CLISTA!」を採用しています。

―― Oracle Database ApplianceとCLISTA!を採用した理由は何ですか。

新村:まずBIツールをいくつか比較し、ベンダーである医用工学研究所が持つ医療分野の知識やノウハウ、実績を評価して、CLISTA!の採用を決めました。そのとき医用工学研究所が紹介してくれたCLISTA!ユーザーの医療機関を見学したのですが、その医療機関の担当者はCLISTA!のDWH基盤となるデータベース製品のパフォーマンスに満足していませんでした。そこで「CLISTA!と組み合わせられるデータベース製品はほかにないのか」ということになり、最終的に十分なパフォーマンスが得られる日本オラクルの製品を採用することになったのです。

木村:Oracle Database Applianceは、ハードウエアにソフトウエアをプリインストールしたアプライアンス製品です。米Oracle社の「Oracle VM」の仮想環境でCLISTA!を含めたソフトウエアを動かすためシステム構成がシンプルになり、運用管理コストを抑えることができます。それに、Oracle Database 12cのEnterprise Editionを比較的安価に利用できる点も評価しました。

常磐病院院長の新村浩明氏
常磐病院院長の新村浩明氏