国内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)向けの大容量パワーコンディショナー(PCS)で群を抜くシェアを持つ東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が、海外戦略を加速させている。今年8月に米国、10月にインドでPCSの新工場を稼働させた。新工場を弾みに、2020年には両市場合わせ、PCSを主体にパワーエレクトロニクス全体で約260億円の売り上げを目指す (関連記事・前半)。ただ、最先端のハイテク製品である大容量PCSの製造工程は複雑で極めて正確な作業が求められる。生産の現地化は簡単ではない。現地の従業員から信頼され、地域に根付きつつ、日本で生産した製品と同じ品質・信頼性をいかに実現するかーー。「セル」と「ライン」を使い分けたTMEICの現地工場を追った。

 TMEICが米国やインドでの現地生産を拡大している背景には、納期への対応や地域に根付く企業としての信頼感の向上、そして、トランプ米国大統領の登場によって、その国で生産して雇用を生み出すべき、という企業への圧力の高まりもある。

基幹部品は日本から供給

 とは言え、「メイド・イン・USA」「メイク・イン・インディア」が、営業戦略上、有利だとしても、それによって製品の品質が低下してしまっては、顧客は満足しない。

 この点、フロスト&サリバンが「日本の工場から主要なデバイスを輸出することで、日本以外の国で製造された製品の品質低下を防いでいる」と評価したように、品質の維持にも成功している。

 米国とインドの新工場では、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)と呼ばれるパワー半導体、MPPT(最大電力点追従制御)などの機能が搭載された制御回路基板については、日本の工場で生産したものを使い、現地調達部品も採用して組み立てている。「基幹部品を日本から調達することで、日本で製造したPCS製品と同じ品質を維持できる」と、TMPEの吉村誠社長は言う(図1)。

図1●インド新工場では1MW機をライン生産している
図1●インド新工場では1MW機をライン生産している
(出所:日経BP)
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 東芝と三菱電機を親会社に持つTMEICの強みは、パワー半導体の開発・製造で世界的な実績のある両親会社と早い段階で連携しつつ、制御回路基板を開発できることにあるという。こうした利点は、国内で設計・製造するから維持できるともいえる。

 TMEICでは、東京都府中市にある生産現場を「マザー工場」と位置づけており、海外の工場での生産工程や生産管理については、基本的に府中事業所の手法を踏襲している。

 量産品の製造工程の考え方には、大きく「セル生産方式」と「ライン生産方式」がある。「セル生産」では、少人数のチームが1つの製品の組み立てから完成まで担当するのに対し、「ライン生産」では製品を移動させながらライン両脇の作業員が特定の工程を受け持つ。

 一般的に「ライン生産」は、1人の受け持つ作業の数が少なく、大量生産品の生産性を上げるのに向く。一方、セル生産では、1人の受け持つ作業数が多くなるものの、仕掛品の圧縮や生産変更に対応しやすく、多品種少量の生産に向く。