5MWのフライホールで電圧最適化

 この用途ではリチウムイオン蓄電池システムが優位性を持つものの、フライホイール(弾み車)を採用するケースも出てきた。フライホイールは、高速応答が可能なため短周期変動対策に向く。

 例えば、カナダの電力事業者であるHydro One Networks社は、同社がオンタリオ州の南西部に保有する出力20MWの風力発電所に併設する形で、5MWのフライホイールを建設した。同風力発電所は、配電網における電圧変動を引き起こしていたことから、フライホイールから無効電力と有効電力を供給して電圧を最適化している。フライホイールはカナダTemporal Power製である。

 水素ストレージであるP2G(パワー・ツー・ガス)システムを併設する試みも出てきた。例えば、コルシカ大学と仏Areva社は共同で、コルシカ島で太陽光発電と水素ストレージ技術を組み合わせて太陽光発電の変動する電力を平準化してスムーズに電力系統に連系するプロジェクト「MYRTE(Mission hYdrogene Renouvelable pour l'inTegration au reseau Electrique:電力網に統合するための再生可能水素ミッション)」を推進している(図2)。

図2●コルシカ島のMYRTEプロジェクトに導入された太陽光・水素ストレージ装置
図2●コルシカ島のMYRTEプロジェクトに導入された太陽光・水素ストレージ装置
(出所:コルシカ大学)
[画像のクリックで拡大表示]

 フランスでは、離島などで再エネが増え、系統網の電力品質が不安定になる問題に対処するため、CRE(Commission de regulation del electricite:フランス電力規制委員会)が発電事業者に対し、ストレージ技術を活用して、1日の発電カーブについて、変動を平準化すると共にピークを抑えた台形プロファイルで系統連系することを求めている。

 実際の運用では、再エネ発電事業者は前日に、フランスの大手電力であるEDF社(Electricite de France:フランス電力会社)に対して太陽光発電および系統網への電力供給の予測データを提供する。その際、天気予報や過去の実績などから太陽光発電の出力を予測すると共に、ストレージ技術を使って平準化した供給電力の出力予測データをEDF社に提供する。

 当日の運用では、EDF社に提出した系統網への予測曲線に基づき、実際の太陽光の発電が予測曲線より上回った場合にはその差分の余剰電力をストレージに貯め、逆に発電が下回った場合にはストレージから系統網に供給する。

 Areva社は、MYRTEの成果を生かして、水電解装置と燃料電池をコンテナにパッケージ化したシステム「Greenergy Box」を開発し、販売を開始した。

 日本でも九州電力管内の離島や北海道電力管内で、メガソーラーの導入量が増えてきたことから、これ以上連系すると系統電力の品質が不安定になる問題が深刻になってきた。

 このため、九電管内の離島と北電管内では、新規にメガソーラーを建設する事業者に対して蓄電池を併設することで、急峻な出力変動を抑える対策をとることを要請し始めたことから、建設が相次いでいる。北海道では風力発電でも短周期変動が問題になっており、新規の風力発電所の建設にあたっては蓄電池システムの設置が求められ始めた。