「容量(kWh)ベースではNAS電池が最も安い」
豊前蓄電池変電所は、三菱電機が蓄電池システム全体のEPC(設計・調達・施工)サービスを担当した。具体的なシステムは、蓄電池の監視制御システムをベースに、日本ガイシ製のNAS電池、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の定格800kWのPCS63 台、三菱電機製の変圧器2 台(66/6.6kV)と受変電設備(6.6kV)から構成する。
蓄電池システムは、1万4000m2の広大な敷地(約100m×約140m)に、252台のNAS電池コンテナを設置した。2段に積まれた20フィートコンテナが、整然と並べられた様子は壮観で、まるで巨大な倉庫のようにも見える。
コンテナ1台で、出力200kW(1200kWh)分のNAS電池と制御装置などを組み込んでいる。1台で120世帯1日分の需要に相当する。このコンテナを縦2段、横に4台並べた計8台で1つのユニット(3200kW)を構成する。1ユニットごとにPCSに接続され、交直変換を行う。
1台のコンテナの中には、6台のモジュール電池(33kW、200kWh)を搭載しており、1台のモジュール電池は192本の単電池(173kW、1.04kWh)で構成されている(図5)(図6)(図7)。
NAS電池は、正極に硫黄(S)、負極にナトリウム(Na)、固体電解質にべータアルミナを用いている。Naが電子を放出してNaイオンになる反応で放電、その逆反応が充電になる。豊前蓄電池変電所にNAS電池を採用したのは、「容量(kWh)ベースでみると、コストが低いことと、短工期で施工が可能だった」(九州電力)からという。
九州電力は、これまでに壱岐、対馬、奄美大島、種子島の4つの離島に大型蓄電池を導入しているが、いずれもLiイオン電池を採用した。離島に導入した蓄電池の目的は、周波数の安定化だった(関連記事)。そのため、短周期の変動対応に高い出力(kW)が必要になる。出力(kW)ベースのコストでみると、Liイオン電池の方が安くなるという。