揚水発電を「下げ代不足」対策に活用

 九電管内では、太陽光発電の導入が急速に進んでいる。2016年9月末の系統接続済みの容量は641万kWに達した。九州本土の太陽光発電の接続可能量(30日等出力制御枠)は817万kWなので、早ければ2017年度中にこの水準に達する可能性がある。

 実は、「接続済み」に「接続承諾済み」を加えた太陽光の容量は、2016年8月末についに1000万kWを超えた。仮に承諾済み案件が接続された場合、接続可能量を200万kW近く上回ることになる。九電のシミュレーションでは、接続可能量を超えてから接続契約した「指定ルール事業者」の場合、年間の出力抑制率は1~2割になる可能性がある。

 九電は、今年5月4日の需給バランスを公開しており、それによると、13時には太陽光・風力の出力は490万kWと需要の66%に達した(図2)。九電は自社の火力発電所の出力を下げ、それでも発生した太陽光の余剰電力を使って揚水発電の動力運転(汲み上げ)を行い、需給バランスを維持した。

図2●九州本土における今年5月4日の需給バランス
図2●九州本土における今年5月4日の需給バランス
(出所:九州電力)
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 こうした火力発電の出力低下でも間に合わないほど太陽光発電からの供給が増える場合を「下げ代不足」という。公表されたグラフから判断すると、九電の持つ揚水動力(約219万kW)は、下げ代対策として、ほぼフルに活用したと見られ、自社施設での対応が限界に近付きつつあることが伺える。

 その後の太陽光の増加を加味すると、2017年5月の大型連休中、仮に九州全域が晴れると、太陽光と風力で600万kW近くの出力が出る可能性もあり、その場合、出力を抑制しない原発の稼働状況によっては、火力の「下げ代」が減り、揚水の動力運転でも対応しきれないと予測された場合、太陽光への出力抑制も現実味を帯びてくる。