蓄電池メーカーのGSユアサが、系統網を安定化させるための大型蓄電池事業を活発化させている。

  同社の系統向け大型蓄電池事業は、チリからスタートした。2012年にチリ北部のコクランにある「コクラン石炭火力発電所」向けに、出力20MW/容量6.3MWhのLiイオン蓄電池システムを納入した。

 チリの一部地域では、発電事業者は発電能力の一定量を運転予備力(Spinning Reserve)として確保しておくことが求められており、機会損失をもたらしていた。運転予備力を蓄電池システムで賄うことで、最大出力で運転できるようになる。

 国内では、離島で太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が増えて周波数の変動する問題を解決するために大型蓄電池を導入する実証プロジェクトに参加してきた。

 例えば、長崎県壱岐には、4MW/1.6MWhの同社製蓄電池システムを設置し、パワーコンディショナーを提供した東芝三菱電機産業システム(TMEIC)と、システム全体の構築を担当した三菱電機と共同で、2013~2014年度にかけて短期間の周波数変動を抑制する実証を行った。

 島根県隠岐諸島でも、2MW/0.7MWhの蓄電池システムを導入し、2015~2017年度にかけて、短周期変動を抑えるために蓄電池システムの効率的な充電・放電制御などを検証した。

 こうした実績や実証成果を生かして、大林組から17.9MWのメガソーラー「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」に併設する10MW/6.75MWhの蓄電池システムを受注し、2017年4月に稼働を開始した(図1)。北海道で系統安定化の用途で国産の大型蓄電池が採用されたのは、初めてのケースになる。

図1●「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」に併設する10MW/6.75MWhの蓄電池システム
図1●「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」に併設する10MW/6.75MWhの蓄電池システム
(出所:日経BP)
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