想定水害に備え「高さ3m」の架台

 その後、1年かけて、太陽光発電とNAS電池を本社の構内系統に接続するためのシステム設計に取り組み、2015年6月に着工し、今年2月に竣工した。

 NAS電池は、従来、出力600kW(コンテナ3基)が最小の設置規模だったが、これでは一般的な中小規模のビルには大きすぎる。そこで、製造元の日本ガイシに依頼し、ビル設置に向いた180kWの中容量タイプを初めて製品化し、その第1号品を設置した。

 導入した新型NAS電池は、出力180kWで6時間充電でき、容量は約1MWh(1080kWh)になる。20フィートコンテナ1台に収めた。カタログ値では、耐久年数は15年、充放電回数4500回で、繰り返しの使い切り運転が可能になっている。

 日本ガイシ製のNAS電池は2011年9月、三菱マテリアル・筑波製作所に設置されていた東京電力所有の出力2MWのシステムが火災事故を起こした経緯がある。これは製造不良と不十分な安全設計が原因だった。これを機に日本ガイシは、製品設計を見直し、多重の安全機能の追加や品質管理の強化により火災安全性が向上したとしている。

 今回、製品化した180kWの新製品では、加熱や水没、落下試験などで行って検証し、危険物保安技術協会(KHK)から安全性性能評価を取得している。

 設備設置に際しては、高さ3mもの架台を建設し、その上に据え付けた(図3)。大阪市は、水害対策の参考としてハザードマップを公表しており、「高さ3m」はその想定水害(過去発生の豪雨の2倍の降雨量)でも水没しない水準を採用した。さらに架台は、阪神淡路大震災相当の地震にも倒壊しない強固な構造とした。

図3●水害に備え高さ3mの架台に設置した
図3●水害に備え高さ3mの架台に設置した
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 「架台の設計はやや過剰とも言えるほど、高くして堅牢にしたが、BCP対策のために設置した蓄電池が、災害で使えなくなるという事態を絶対に避けるため、万全を期した」と、岡部次長は言う。