秒単位の制御で電圧上昇を抑制

 もう1つの実証目的が、蓄電池用に設置したPCSの付随的な機能を活用し、送電系統の電圧上昇を抑制する効果を検証することだ。

 PCSの付随的な機能とは、「無効電力を電力系統に投入して、系統側の電圧を一定に保つ仕組み」のこと。「無効電力」とは、仕事に変換できる一般的な電力(有効電力)に対する交流電気の種類で、仕事には変換できないものの、交流電気の流れをスムーズにする性質がある。PCSは、一定範囲内で有効電力と無効電力を同時に出力できる。

 太陽光発電の連系設備は、連系する送配電線の電圧よりやや高い電圧で逆潮させるため、逆潮する量が増えてくると系統側の電圧が上昇してしまう。その場合、太陽光のPCSが系統に無効電力を投入することで、電圧上昇を抑制できる。

 南相馬変電所の大容量蓄電池が連系する「南相馬66kV母線」には、すでに3つのメガソーラーが連系しており、今後も増える可能性がある(図10)。晴天時などに、太陽光出力が急増し、送電線の電圧が上昇した場合、無効電力を投入してその効果を検証する。

図10●変電所の蓄電池用PCSから送電線に無効電力を投入し電圧上昇を抑制
図10●変電所の蓄電池用PCSから送電線に無効電力を投入し電圧上昇を抑制
(出所:日経BP)
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 こちらの制御は、66kV母線の電圧変動を監視しながら、PCSに対して指令を出すことになる。今回の蓄電池システムは、指令を受けてから実出力まで3秒以内の応答性を持つことから、短周期(秒単位)での電圧変動の抑制制御が可能という。

 一般的に送電系統の電圧上昇を防ぐには、SVC(無効電力補償装置)やSVR(自動電圧調整器)などの設備を系統側に設置することが多い。系統に連系した蓄電池のPCSを活用して電圧上昇を効果的に抑制できれば、SVCの代替として活用できる。