「火力の下げ代不足」を克服

 大容量蓄電池の第一の目的は、「太陽光の大量導入に対応した需給バランスの改善」になる。電力系統に太陽光が大量に連系され始めた場合、まず問題になるが、昼間軽負荷期に太陽光出力が最大になる正午前後に起きる「火力発電の下げ代不足」と呼ばれるものだ。

 太陽光の出力が増えるに従い、系統運用者は、火力発電の出力を下げることで需給バランス維持する。ただ、火力発電はすべて停止できない。太陽光は急な気象変化で出力が急減する恐れもあるため、火力は、それに備えて短時間で出力を上げられる状態にしておく必要がある。運転を止めてしまうと立ち上げに時間がかかるため、安定稼働できるギリギリの部分負荷まで出力を絞る、という運用になる。

 だが、自社保有する火力発電をこのレベルまで下げても、太陽光出力がさらに増大していく場合、「火力発電の下げ代不足」となり、供給が需要を上回ってしまう。

 実際には、こうした場合、まず揚水発電の動力運転(汲み上げ)によって、需給バランスを維持し、それでも余剰電力を消費し切れない場合、以下の運用ルールが決まっている。(1)東北電力以外の火力電源の出力抑制、(2)連系線を活用した東北地区外への電力供給、(3)バイオマス専焼発電の抑制、(4)地域資源バイオマス発電の抑制――という順番で実施し、それでも供給が需要を上回る場合、太陽光の出力抑制を実施することになる(図8)。

図8●電力広域的運営推進機関による優先給電ルール
図8●電力広域的運営推進機関による優先給電ルール
(出所:九州電力)
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 太陽光の出力抑制に至る、こうしたプロセスの中で、南相馬変電所に設置した40MWhの大容量蓄電池への充電は、揚水発電の動力運転と同じ役割を担うことになる。それによる太陽光の接続可能量(30日等接続可能枠)の拡大効果を50MWと見込んだわけだ。

 こうした蓄電池による需給バランスの改善効果は、東北地区全体に及ぶ。ただ、今回はそれによる接続枠の拡大を政策的に福島県の避難解除地区に割り当てることになった。