電解液が不燃性で安全

 そうしたなかでも、レドックスフロー電池の優位性は、期待寿命と安全性にある。電解質の硫酸バナジウム水溶液は、イオンの価数変化のみで、析出や溶解を伴わないため、活物質として劣化がなく、半永久的に再利用できるという(図7)。

図7●系統用蓄電池の要件とレドックスフロー電池の特徴
図7●系統用蓄電池の要件とレドックスフロー電池の特徴
(出所:北海道電力)
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 また、「同水溶液は、不燃物質で構成材料も難燃性のため、火災の危険性は極めて低い」(北海道電力)。正負の電解液が混ざっても、自己放電するだけで発火しないため、「万が一、セルの内部短絡が起こっても、燃えることはない」(北海道電力)という。

 常に発火のリスクを指摘されるLiイオン電池とNAS電池に比べると、こうしたレドックスフローの安全性は、今後の大型蓄電池を巡るシェア争いのなかでも、大きな利点として評価されることになりそうだ。

 実際、南早来変電所に新設した建屋にレドックスフロー電池を据え付ける際の消防協議でも、こうした特性が評され、火災対策に関する一部の設備、例えば、1500m2ごとに必要な防火扉や、屋内固定式消火設備の設置が免除されたという。

 運用面の利点は、起電力を直接、測定できるため、充放電中の充電残量をリアルタイムで正確に把握できること、という。これにより、ほかの蓄電池に比べると、不規則な充放電時でも残量管理が相対的に容易という。ただし、電解液の循環による時間遅れがあるため、今回、これを補正するアルゴリズムを開発した。