需要家が導入した小型蓄電池を補完

 ストロームバンクの実証では、1アカウントごとに4kWhの蓄電容量を割り当て、保有容量以上に余剰が出た場合には、容量が不足している他の需要家に余剰分の販売も可能とする実験も進めている。そうなれば、需要家は電気事業者の顔も持ち合わせることになる。

 蓄電池を共有する需要家が、太陽光発電に加え夜間も発電できるコージェネを適正な比率で所有し、互いの発電と電力消費をうまく融通できればストロームバンクの運用効率は高まる。

 例えば、昼間の晴天時は太陽光発電を保有する需要家は余剰が出やすいため、アカウント上の蓄電量は増え、ストロームバンク全体の電池容量(SOC:State of Charge)も高い水準になる(図3)。その際、コージェネを所有する需要家は装置を止めて蓄電した電気を使うようにすれば、ストロームバンクの利用効率は上がり、トータルの電気料金は下がる可能性がある。

図3●晴天時のストロームバンクの稼働スキーム。太陽光発電システムを保有する消費者の余剰電力を蓄電し、コジェネシステム保有の消費者が放電して消費する
図3●晴天時のストロームバンクの稼働スキーム。太陽光発電システムを保有する消費者の余剰電力を蓄電し、コジェネシステム保有の消費者が放電して消費する
(出所:MVV Energie)
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 雨や曇りで太陽光の発電量が少ないケースでは、逆にコージェネを稼働させて電気と熱を生産し、余剰分をストロームバンクに蓄電する。太陽光発電システムを保有する消費者はストロームバンクにある自分の過去の蓄電分を使う(図4)。需要家は自ら蓄電池を所有しなくても、太陽光など分散電源の自家消費の割合を高めることができる。

図4●曇天・雨天時のストロームバンクの稼働スキーム。コジェネシステムを保有する消費者の余剰電力を蓄電し、太陽光発電システム保有の消費者が放電して消費する
図4●曇天・雨天時のストロームバンクの稼働スキーム。コジェネシステムを保有する消費者の余剰電力を蓄電し、太陽光発電システム保有の消費者が放電して消費する
(出所:MVV Energie)
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 ドイツでは、需要家が各自で設置した比較的小型の蓄電池を補完するために大型蓄電池を共有する試みも始まっている。

 エネルギー関連のサービスプロバイダーである独ビージー(BEEGY)は、2016年1月、顧客が屋根などに設置する太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせた新システム(BEEGY Solar Power + Goal)を売り出した。

 太陽光で発電した電力を自宅に置いた小型蓄電池を活用しながら自家消費することでエネルギーコストを削減する。そして、自宅の蓄電池がカラになっても、外部にある大型蓄電池「BEEGY Pool」から電力の供給を受けられる。宅内と外部の蓄電池を併用することで、エネルギーの利用効率をさらに高めるという発想だ。