蓄電池の「小分け」で高いコストをカバー

 しかし、それでも家庭用蓄電池の主流であるLiイオン蓄電池の価格は高く、本格的な普及にまではまだ時間がかかるという見方が多い。日経BPクリーンテック研究所の調べでは、2016年時点での家庭用Liイオン蓄電池システム(パワーコンディショナー込み)の価格は、1kWh当たり7万~15万円であり、中心価格は10万円である。これが、中心価格で5万円程度に下がれば本格普及期を迎えると見られており、その時期は2020年ごろだと予想される。

 そこで出てきた考え方が、よりコスト面で有利な大型蓄電池を電力会社などの事業者の負担で地域に設置し、需要家がその蓄電池の容量を小分けして、銀行口座のようにして使う試みである。これにより、自ら蓄電池を持たなくても太陽光発電の自家消費率の向上やピークカットによってエネルギー消費を最適化し、コストダウンできる。

図1●ドイツ・マンハイム市に本社を持つMVVエネルギー
図1●ドイツ・マンハイム市に本社を持つMVVエネルギー
(撮影:日経BPクリーンテック研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

 大型蓄電池は現在、系統網に連系してアンシラリーサービスなどの系統安定化に役立てる試みが実証フェーズから実用フェーズに移りつつある。需要家に設置した複数の小型蓄電池をVPP運用するケースに対して、もともと系統運用には強みを持っている。つまり、大型蓄電池を需要家がシェアして使う機能を追加することで、需要家のエネルギー消費の最適化と系統安定化の機能を併せ持つ可能性も出てきて、大型蓄電池の適用が広がる可能性がある。

 ドイツでは地域エネルギー会社(シュタットベルケ)の1つであるMVVエネルギー(MVV Energie)が、「ストロームバンク(Strombank)」と呼ぶ実証実験を2014年12月からマンハイム市で進めている(図1)。