余剰電力の充電で「クレジット」

 オーストラリアでは西部のパースを拠点とする電力会社、シナジー(Synergy)が蓄電池のシェアリングを目指した実証実験に着手した。パースの北42kmに位置するアルキモスビーチに蓄電容量1.1MWhという大型のコンテナ型Liイオン蓄電池システムを設置し、西オーストラリア州の送配電事業者、ウエスタンパワー(Western Power)が運営する送電網に系統接続した。

 太陽光発電を所有する需要家が余剰電力を大型蓄電池に貯蔵すると、蓄電量に応じてシナジーから「クレジット」がもらえる。蓄電池を放電させて電力を消費した場合には、持っているクレジットをシナジーに支払う(図5)。

図5●蓄電池システムのシェアリングのスキーム。プログラム参加者は、太陽光発電の余剰分を蓄電池に溜め、「クレジット」を受け取る。消費時にはそのクレジットを使うことで、エネルギーコストの削減が可能になる
図5●蓄電池システムのシェアリングのスキーム。プログラム参加者は、太陽光発電の余剰分を蓄電池に溜め、「クレジット」を受け取る。消費時にはそのクレジットを使うことで、エネルギーコストの削減が可能になる
(出所:Synergy)
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 実証実験に参加しない太陽光所有者は、シナジーが同地域で実施している余剰買取制度に基づいて売電することになるが、実証に参加すると年間で平均約100豪ドル(8700円)多く、エネルギーコストを削減できるとしている。

 シナジーはこの仕組みを顧客の囲い込みにつなげると同時に、蓄電することで太陽光発電から系統に流れ込む電力量を抑えることが可能になり、火力発電所の焚き減らしや需給調整用の新規発電所投資を削減できると見込んでいる。